コラム

肩が上がらない原因は肩とは限らない|4つの病態を鑑別してから肩関節注射を考える2026.07.13

「腕が上がらない」「服を着替えるときに肩が痛む」──こうした肩の症状で受診される方は多いのですが、実は肩が上がらない原因は肩関節そのものだけとは限りません。五十肩(肩関節周囲炎)、腱板断裂、石灰沈着性腱炎、そして頸椎症性の放散痛など、まったく異なる病態が同じような症状として現れることがあります。診断を曖昧にしたまま局所治療を繰り返しても、根本原因が別の場所にあれば効果は限定的です。当院AVAN TOKYO銀座では、幹細胞培養上清液を用いた肩関節注射を検討する前に、まず「痛みと可動域制限がどこから来ているか」を丁寧に鑑別することを大切にしています。本記事では、監修医の森脇医師が、肩の症状を切り分ける4つの視点と、この治療がどの病態で意味を持つのかを整理します。

この記事の要点

・肩が上がらない原因は「五十肩・腱板断裂・石灰沈着性腱炎・頸椎症性放散痛」の4系統に大別され、それぞれ治療戦略が異なる

・肩関節注射(幹細胞培養上清液)は、どの病態にも同じように効くわけではなく、診断ありきで適応を判断する必要がある

・エコーガイド下で「肩関節腔・肩峰下滑液包・腱付着部」のどこへ入れるかを打ち分けることで、狙いが明確になる

・頸椎由来の放散痛や神経症状には、肩局所への注射は第一選択にならない

・効果には個人差と限界があり、疼痛スコアと可動域を客観評価しながら継続・変更を判断する

肩が上がらない4つの原因を切り分ける

①五十肩(肩関節周囲炎)

五十肩は40〜60代に多く、明らかな外傷がないのに肩の可動域が制限され、夜間痛を伴うのが特徴です。病態としては関節包の炎症と拘縮が中心で、炎症期・拘縮期・回復期の3相を経過します。自然経過で改善する病態であることも重要な前提です。ただし放置すれば拘縮が強く残ることもあるため、病期に応じた対応が求められます。

②腱板断裂

腱板断裂は、加齢や反復ストレスにより回旋筋腱板(棘上筋・棘下筋など)が断裂した状態です。「上げようとすると力が入らない」「他動的には上がるが自動運動で制限が出る」といった筋力低下パターンが特徴です。断裂サイズや脂肪変性の程度(Goutallier分類)によって、保存療法で経過を追えるものと手術適応となるものが分かれます。

③石灰沈着性腱炎

突然の激痛で発症し、腕を全く動かせなくなるのが典型的です。腱板内にリン酸カルシウム結晶が沈着し、その吸収期に強い炎症が起こります。レントゲンで白い石灰陰影が確認できることが多く、鑑別自体は比較的容易です。

④頸椎症性の放散痛

肩の痛みでも、実は頸椎(首)の神経根が刺激されて肩や上腕に痛みが放散しているケースがあります。頸椎の動きで症状が変化する、上肢のしびれや筋力低下を伴う、Spurlingテストが陽性、といった所見があれば頸椎由来を疑います。この場合、肩そのものは大きく傷んでいないことも珍しくありません。

shoulder joint injection stem cell conditioned media

なぜ「診断ありき」で肩関節注射を考えるべきか

病態が違えば、注射すべき層が違う

肩へ投与するといっても、実際には「関節腔内」「肩峰下滑液包」「腱付着部」など複数の標的層があります。五十肩(関節包炎)なら関節腔内、腱板炎や肩峰下インピンジメントなら肩峰下滑液包、腱付着部症なら付着部、といった打ち分けが必要です。エコーガイド下で標的を確認しながら投与することで、無駄打ちを避け、意図した層に幹細胞培養上清液を届けやすくなります。

頸椎由来なら肩への局所治療は第一選択ではない

神経根症状が強い頸椎症性の放散痛に対して、肩に注射しても根本原因にアプローチできません。この場合は頸部の保存療法(安静・薬物療法・神経ブロックなど)や脊椎専門医との連携が優先されます。関節疾患の情報については日本整形外科学会のガイドラインも参照ください。

幹細胞培養上清液で「何が期待でき、何が期待できないか」

幹細胞培養上清液は、成長因子やサイトカインなど多彩な分泌成分を含み、関節内の炎症環境や腱・滑膜の修復環境に働きかけることが基礎研究で示されています。ただし、断裂した腱板を「縫い直す」ような構造的修復や、進行した関節破壊を元に戻す作用が確立されているわけではありません。あくまで「炎症を鎮め、修復の土台を整える」補助的な位置づけとして、外科的治療・運動療法と組み合わせて設計することが重要です。

肩関節注射を「効果的な治療」にするために

効果判定は数週〜数か月単位で

腱・靭帯・滑膜の修復環境が整うにはある程度の時間がかかります。1回打って翌週判断するのではなく、数週〜数か月単位で疼痛スコア・可動域・日常動作を客観評価します。反応が乏しければ、継続にこだわらず、変更や整形外科的な再評価への切り替えを検討します。効果には個人差があり、限界があることも診療の中で丁寧にお伝えしています。

運動療法・装具との併用が土台

どの病態でも、注射「だけ」で完結する治療設計は現実的ではありません。ストレッチや筋力訓練で拘縮・筋力低下に対処し、必要に応じてサポーターや生活動作の指導を組み合わせます。関節注射単独では戻せない「動かせる肩」を目指すには、リハビリとの並走が欠かせません。幹細胞培養上清液の関節注射について詳しくはこちらもご参照ください。

他の関節注射との位置づけ

ステロイド関節注射は強い抗炎症作用があり、急性期の鎮静に有用ですが、繰り返し使用による腱・軟骨への影響が課題となります。ヒアルロン酸は主に潤滑・粘弾性を補う目的で用いられます。幹細胞培養上清液はこれらとは異なる作用軸(組織修復環境への働きかけ)として位置づけられ、置き換えというより「病期と目的に応じた使い分け」が現実的です。

よくある質問

Q. 肩関節注射は五十肩ならどの病期でも効きますか?

炎症期・拘縮期・回復期のいずれでも投与自体は可能ですが、特に炎症が強い時期に鎮静を狙うケースが多くなります。ただし五十肩は自然回復する病態でもあり、注射だけで全経過が短縮すると断定はできません。運動療法との併用が前提です。

Q. 腱板断裂があっても改善しますか?

断裂サイズが小さく脂肪変性が軽度であれば、保存療法の選択肢として幹細胞培養上清液の投与を検討することがあります。大きな完全断裂や変性が進んだケースでは手術が優先されることも多く、整形外科的な画像評価が不可欠です。

Q. 首から来る痛みかどうか、自分で分かりますか?

自己判断は困難です。首を動かすと肩の痛みが変わる、腕にしびれがある、握力が弱ってきた、といった症状があれば頸椎由来を疑い、専門的な診察と画像検査を受けてください。この場合、肩への注射より先に頸椎の評価が優先されます。

Q. 石灰沈着性腱炎ではどんな治療になりますか?

急性期は強い炎症を伴うため、抗炎症治療を優先することが一般的です。石灰そのものを幹細胞培養上清液が溶かすわけではなく、炎症を鎮めた後の腱組織の修復環境を整える補助的な選択肢と考えてください。

Q. 何回くらい肩関節注射を受ければ効果が分かりますか?

病態や重症度により異なりますが、通常は数週〜3か月ほど経過を追い、疼痛と可動域の変化で判定します。反応が乏しい場合は継続にこだわらず、診断の見直しや他の治療選択への切り替えも検討します。

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【監修】森脇 進 / Shin Moriwaki(監修医師)

日本美容外科学会(JSAS)会員 / American Academy of Aesthetic Medicine 会員

ECFMG Certificate 取得

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