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Columnコラム

脂肪吸引後の漢方薬は本当に効くのか?治打撲一方・越婢加朮湯・桂枝茯苓丸の使い分けを森脇医師が解説2026.08.12

脂肪吸引後の内出血やむくみを少しでも早く引かせたい方から「脂肪吸引漢方薬は本当に効きますか?」というご相談を頻繁にいただきます。処方の鎮痛薬や抗生剤に加え、東洋医学に伝わる漢方薬をうまく組み合わせることで、術後回復の質が変わる場面は確かに存在します。ただし全ての漢方が万能ではなく、成分・作用機序・体質を踏まえて選ぶことが前提です。本稿では、脂肪吸引漢方薬として臨床で用いられる治打撲一方・越婢加朮湯・桂枝茯苓丸の3処方について、森脇医師が医学的な機序と実際の使い分けを解説します。

この記事の要点

・脂肪吸引漢方薬は「内出血」「浮腫」「瘀血」という3つの病態に対して、それぞれ役割の異なる処方を使い分けるのが基本です。

・治打撲一方は打撲・術後血腫に対する第一選択で、駆瘀血作用により皮下出血の吸収を助けます。

・越婢加朮湯は炎症性浮腫に対して利水作用を発揮し、腫れの強い時期に短期的に用います。

・桂枝茯苓丸は冷えや月経困難を持つ瘀血体質の方の脂肪吸引後の末梢循環改善に向いています。

・自己判断での長期服用は偽アルドステロン症・肝機能障害などの副作用リスクがあり、必ず医師管理下で使用してください。

脂肪吸引漢方薬が術後回復で注目される医学的理由

脂肪吸引後のダウンタイムでは、皮下組織の広範な剥離に伴い、内出血・浮腫・拘縮という3つの病態が並行して進行します。処方薬のNSAIDsは炎症を抑えますが、血腫の吸収スピードそのものを速める作用はありません。またリンパドレナージや圧迫固定は物理的に浮腫を減らす手法ですが、体内の水分・血流バランスに直接介入するわけではありません。ここに、体全体の「気・血・水」を整えるという東洋医学の考え方が組み合わさります。

漢方薬は複数の生薬の複合作用によって、内出血・血栓性素因・慢性浮腫といった「西洋薬が単剤では扱いにくい領域」を側面から補助します。日本ではエキス製剤として保険適応で処方可能であり、副作用プロファイルも臨床データで比較的よく調べられています。脂肪吸引漢方薬という表現は独立した治療法を意味するのではなく、実際は「西洋医学と東洋医学を組み合わせた併用療法」として活用するものと理解してください。

漢方薬 生薬 顆粒

治打撲一方(じだぼくいっぽう)|内出血・術後血腫への第一選択

治打撲一方は江戸期の外科医・香川修庵が創案した処方で、その名の通り打撲や皮下出血に対して用いられる代表的な漢方です。桂皮・川芎・樸樕・大黄・丁子・甘草などの生薬から構成され、駆瘀血作用と抗炎症作用を併せ持ちます。皮下に残留した血液(瘀血)の吸収を促し、内出血の色調変化を早める働きが期待されます。

脂肪吸引後の使い方としては、術当日または翌日から10日〜2週間を目安に服用します。エキス顆粒として1日3回、食前または食間投与が基本です。二の腕・大腿・腹部といった内出血が長引きやすい部位で、患者様の主観的な回復感に差が出ると感じることが多い処方です。ただし大黄成分の緩下作用により軟便・下痢傾向になる方がおり、その場合は減量または中止を検討します。

越婢加朮湯(えっぴかじゅつとう)|炎症性浮腫への利水作用

越婢加朮湯は麻黄・石膏・生姜・大棗・甘草・白朮から構成され、体表の熱と水分停滞に働きかける処方です。脂肪吸引後3日〜2週間の「炎症期」に生じる皮下浮腫・熱感・重だるさに対して、利水作用と抗炎症作用を発揮します。

ただし麻黄にはエフェドリンが含まれ、心拍数上昇・血圧上昇・不眠などの交感神経刺激症状が出る場合があります。甲状腺機能亢進症・高血圧症・虚血性心疾患のある方には慎重投与が必要です。また甘草の連用は偽アルドステロン症(低カリウム血症・浮腫悪化)を招くため、原則2週間以内の短期使用に留めます。カリウム値の変動が気になる方には代替として五苓散を選ぶこともあります。

桂枝茯苓丸(けいしぶくりょうがん)|瘀血体質と冷えへの中期処方

桂枝茯苓丸は桂皮・茯苓・牡丹皮・桃仁・芍薬から成り、瘀血(血液の流れが滞る状態)に対する代表的処方です。冷え・月経困難症・下肢の重だるさ・肩こりを併せ持つ方が脂肪吸引を受ける際、術前1〜2週間から術後1ヶ月程度の中期的な服用で末梢循環の改善と拘縮期のこわばり緩和が期待されます。

治打撲一方が急性期の血腫に対する短期処方であるのに対し、桂枝茯苓丸は体質改善的な中長期処方です。両者は理論上併用可能ですが、脂肪吸引後の同一時期に3剤すべてを重ねるのは避け、症状の主体に合わせて絞り込みます。

脂肪吸引漢方薬を安全に使うための3つの注意点

第一に、必ず処方医(当院または漢方内科)に脂肪吸引の術式・使用薬剤・既往歴を伝えてください。抗凝固薬・降圧薬・利尿薬との相互作用があります。第二に、大黄・麻黄・甘草を含む処方の長期連用は肝機能障害・偽アルドステロン症・尿閉リスクがあり、2〜4週間ごとの評価が必要です。第三に、市販の生薬サプリメント(田七人参・当帰・イチョウ葉など)を勝手に上乗せしないこと。単独では安全でも、処方漢方と重ねると成分が過剰になる恐れがあります。

美容外科の安全基準や漢方併用の考え方については、日本美容外科学会の情報も参照してください。関連する術後ケアや回復に関する詳細は脂肪吸引の関連コラム一覧にまとめています。

よくある質問

Q. 脂肪吸引後、漢方薬は必ず飲んだ方が良いのですか?

必須ではありません。標準的な圧迫固定・鎮痛薬・リンパドレナージだけで順調に回復する方が大半です。内出血や浮腫が強い場合、あるいは冷え・瘀血体質を自覚している方において、補助的な選択肢としてご提案しています。

Q. 治打撲一方は何日くらい飲めば良いですか?

目安は10日〜2週間です。皮下出血の色調が黄色に変わり吸収が進んだ段階で減量・中止を検討します。軟便が続く場合はそれ以前に減量してください。

Q. 市販の漢方薬を自分で買って飲んでも良いですか?

推奨しません。同じ処方名でも含有量やメーカーの製剤設計が異なり、鎮痛薬・降圧薬・ピルなどとの相互作用が予測できません。必ず医師の指示のもとでお使いください。

Q. 授乳中や妊娠中でも脂肪吸引漢方薬は使えますか?

妊娠中は大黄・麻黄・桃仁など子宮収縮や胎児への影響が懸念される生薬を含む処方が使えません。授乳中も乳汁移行が懸念される成分があります。原則として妊娠・授乳期の術後漢方処方は避ける方針です。

Q. 漢方薬とアルコールは併用しても良いですか?

術後2週間は原則禁酒を推奨しています。漢方薬の吸収や肝代謝に負担がかかるため、服用期間中の飲酒は避けてください。

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【監修】森脇 進 / Shin Moriwaki(監修医師)
日本美容外科学会(JSAS)会員 / American Academy of Aesthetic Medicine 会員
米国医師免許資格(ECFMG certificate)
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