コラム

変形性膝関節症の骨棘は取り除くべき異物なのか?体が作った構造としての意味と注射で狙える範囲2026.08.16

「膝が痛くてレントゲンを撮ったら『骨棘(こつきょく)ができています』と言われた」──そう不安になる方は多いです。骨のトゲができたイメージから、「取ったほうがいいのでは」「削ったら痛みが消えるのでは」と考えるのは自然な反応です。しかし変形性膝関節症の骨棘は、必ずしも取り除くべき異物ではありません。関節を守るために体が形態を変えた結果として現れる構造であり、時には関節を安定化させる装置としても働きます。この記事では、変形性膝関節症の骨棘の医学的な意味と、幹細胞培養上清液の膝関節注射で狙える範囲・狙えない範囲を、AVAN TOKYO銀座の森脇医師が整理します。

この記事の要点

・変形性膝関節症の骨棘は「関節破壊の残骸」ではなく、荷重分散と関節安定化のために体が作った適応的な骨形態変化である

・骨棘そのものが痛みの主因になる例は限定的で、多くは併存する滑膜炎・関節液貯留・軟骨下骨浮腫が痛みを生んでいる

・幹細胞培養上清液の膝関節注射で狙えるのは関節内の炎症環境の是正であり、骨棘そのものを縮小・除去することはできない

・骨棘が神経・軟部組織を機械的に圧迫していたり、可動域を骨性に強く制限している場合は外科的除去の適応となる

・骨棘があっても、痛みの主因が滑膜炎・関節液貯留であれば幹細胞培養上清液の膝関節注射は保存療法の選択肢になり得る

変形性膝関節症の骨棘とは何か──なぜできるのか

骨棘は、関節軟骨の摩耗と軟骨下骨への持続的なストレスに対して、骨が増殖して形を変えた結果として現れる構造です。関節辺縁の骨膜下で骨形成が進み、時間をかけて棘状・唇状などさまざまな形態を取ります。決して「壊れた骨のかけら」ではなく、関節を安定させ、増大した荷重を分散させるために体が能動的に作り上げる骨新生の一部です。

骨棘は「関節の破壊の残骸」ではない

X線で骨棘を初めて指摘された患者さんは、しばしば「軟骨がすり減って、そのかけらが骨のトゲになった」と誤解します。しかし実際には、関節軟骨が薄くなって関節への負荷が増えたとき、その負荷に対応するために関節辺縁の骨膜が反応し、骨芽細胞が新しい骨を作る過程で生まれるのが骨棘です。工学的には、荷重面積を広げて単位面積あたりの圧力を下げるという合理的な変化ともいえます。

骨棘と重症度分類(KL分類)の関係

変形性膝関節症の重症度分類であるKellgren-Lawrence(KL)分類では、骨棘の存在がグレードⅡ以上の判定基準として使われます。骨棘の有無や大きさは関節症の進行度を反映する指標であり、骨棘そのものが「病気の本体」というわけではありません。小さな骨棘のみが見えるKLグレードⅡと、大きな唇状骨棘と関節裂隙の消失を伴うKLグレードⅣでは、骨棘の意味も治療戦略も大きく変わってきます。

knee osteoarthritis osteophyte bone spur x-ray

変形性膝関節症の骨棘は取り除くべき異物なのか

「骨棘があるから痛む」「骨棘を取れば痛みが消える」というイメージは、必ずしも医学的事実と一致しません。関節鏡下でシェービング(骨棘切除)を行った症例で、痛みが必ずしも軽減しなかったという臨床報告も多く、骨棘は原因というより結果である場合が少なくありません。

関節安定化装置としての骨棘

膝関節では、軟骨の摩耗と関節裂隙の狭小化が進むにつれて関節の安定性が低下します。そこに現れる骨棘は、大腿骨顆部の縁や脛骨関節面の縁で「関節の受け皿」を広げ、関節の左右方向・回旋方向のブレを抑える方向に働くことがあります。特に内側型変形性膝関節症で、脛骨内側顆に形成された骨棘が半月板の逸脱を物理的に抑えている例は少なくありません。骨棘を安易に切除すると、かえって関節不安定性が増して痛みが悪化するリスクがあります。

骨棘を取るべき場合、取ってはいけない場合

骨棘の外科的除去が明確に検討される代表例は、(1)伸展・屈曲の可動域を骨性に制限しているインピンジメント様の骨棘、(2)皮下で神経や腱を機械的に圧迫している骨棘、(3)関節内で遊離体(関節ネズミ)として痛みや引っかかりを起こしている骨片、といった限定された状況です。逆に「X線で骨棘が写っている」だけで、それが痛みの直接原因である確証がない場合、除去手術は第一選択にはなりません。多くの変形性膝関節症の痛みは、骨棘そのものではなく、併存する滑膜炎・関節液貯留・軟骨下骨浮腫・半月板変性のいずれか、あるいはその組み合わせから生じています。

幹細胞培養上清液の膝関節注射で狙える範囲と狙えない範囲

変形性膝関節症の骨棘に対して、患者さんから「幹細胞培養上清液で骨棘を溶かせないか」と質問を受けることがあります。しかし、幹細胞培養上清液の膝関節注射で狙えるのは、骨棘そのものの形態変化ではなく、関節内で進行している炎症サイクルの調整です。

狙えるのは関節内の炎症環境の是正

幹細胞培養上清液には多様な成長因子・サイトカイン・エクソソームが含まれ、関節腔内に投与すると滑膜細胞・軟骨細胞・免疫細胞へ働きかけると考えられています。狙いは、関節破壊を進める炎症サイクル(IL-1β・TNF-α・MMP群など)を落ち着かせ、組織修復に有利な微小環境を作ることです。骨棘のある膝でも、痛みの主因が滑膜炎・関節液貯留・軟骨下骨浮腫であれば、この関節内環境への働きかけが症状緩和につながる可能性があります。関節疾患の一般的な情報については日本整形外科学会のサイトも参照ください。

狙えないのは骨形態そのものの改変

一方で、幹細胞培養上清液の膝関節注射で骨棘のサイズや形が変わることはありません。骨棘は年単位で形成された骨新生の産物であり、これを縮小させるには外科的除去以外の方法はほとんど存在しません。「骨のトゲを消したい」という主訴が最上位の場合、幹細胞培養上清液の膝関節注射は答えになりません。この線引きを最初に患者さんと共有することが、期待値のずれを防ぐ第一歩です。詳しくは幹細胞培養上清液の関節注射についてもご覧ください。

骨棘のある膝で幹細胞培養上清液の膝関節注射を検討するときの実務

変形性膝関節症の骨棘があっても、注射を検討して良い症例と、まず整形外科的評価を優先すべき症例があります。注射を検討し得るのは、KLグレードⅡ〜Ⅲ相当で関節裂隙がある程度残っており、痛みの中心が滑膜炎・関節液貯留・スターティングペインなど「炎症由来」と考えられるケースです。逆に、可動域制限が骨性に強く固定されている、遊離体によるロッキング症状がある、KLグレードⅣで関節裂隙がほぼ消失し骨対骨接触が進んでいるといった場合は、まず整形外科的評価を優先し、注射単独では対応できない可能性を共有します。X線と必要に応じてMRI、可動域・不安定性・疼痛部位を組み合わせた診察が前提です。

よくある質問

Q. 骨棘はレントゲンに写るほど大きいと必ず痛みの原因ですか?

必ずしもそうではありません。X線で明瞭に写る骨棘があっても、それが痛みの直接的な発生源とは限りません。多くの症例では、併存する滑膜炎や軟骨下骨浮腫のほうが痛みに強く関与しており、骨棘の大きさと痛みの強さは必ずしも相関しないことが変形性膝関節症の診療でよく経験されます。

Q. 幹細胞培養上清液の膝関節注射で骨棘は小さくなりますか?

小さくなりません。幹細胞培養上清液で狙えるのは関節内の炎症環境の調整までであり、骨棘という骨組織そのものの形態を変化させる作用はありません。骨棘を除去したい場合は、関節鏡下切除や人工膝関節置換術など外科的処置の適応を整形外科医と相談することになります。

Q. 骨棘があっても幹細胞培養上清液の膝関節注射は受けられますか?

骨棘の存在自体は禁忌ではありません。関節裂隙がある程度保たれており、痛みの中心が炎症由来と考えられるKLグレードⅡ〜Ⅲ相当の症例では選択肢になり得ます。ただし可動域が骨性に固定されている、遊離体のロッキングがある、末期の骨対骨接触状態など、注射単独では対応できない状況もあるため、事前の画像評価と整形外科的診察が前提となります。

Q. 骨棘を放置していると、変形性膝関節症はさらに進みますか?

骨棘そのものが関節症を進行させているというより、骨棘を作らせるだけの荷重・炎症環境が続いていることが問題です。体重管理・大腿四頭筋強化・活動修正といった保存療法で関節への負荷を減らすこと、必要に応じて幹細胞培養上清液の膝関節注射などで炎症環境を整えることが、進行を緩やかにするうえで意味を持ちます。

Q. 変形性膝関節症の骨棘が痛みの原因かどうかは、どうやって見極めますか?

問診(どの動作で痛むか)、診察(圧痛部位・可動域・関節不安定性)、画像所見(X線・MRIでの滑膜肥厚・関節液・骨髄浮腫の有無)を組み合わせて総合的に判断します。骨棘が皮下で触知できて圧痛と一致する、あるいは可動域を骨性に制限しているといった所見があれば骨棘由来の要素が強いと考えます。そうでなければ、まず関節内の炎症を整える保存療法から検討します。

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【監修】森脇 進 / Shin Moriwaki(監修医師)

日本美容外科学会(JSAS)会員 / American Academy of Aesthetic Medicine 会員

ECFMG Certificate 取得

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