コラム

骨粗鬆症がある人の膝関節注射|ビスホスホネート・デノスマブ・テリパラチドとの並走設計2026.08.08

「変形性膝関節症の治療を進めたいが、同時に骨粗鬆症の治療も何年も続けている」──60代以降の女性を中心に、このような相談は決してめずらしくありません。骨粗鬆症合併変形性膝関節症は、関節軟骨や滑膜の変性と、全身の骨密度低下という別レイヤーの病態が、同じ人のなかで同時に進行している状態です。膝の痛みや動きにくさの原因を一つの臓器に絞りにくいことが、治療設計を難しくする最大の理由です。本記事では、AVAN TOKYO銀座の再生医療の観点から、骨粗鬆症合併変形性膝関節症に対して幹細胞培養上清液の膝関節注射をどう位置づけるか、狙える範囲と狙えない範囲、既存の骨粗鬆症治療との並走設計を森脇医師が整理します。

この記事の要点

・骨粗鬆症合併変形性膝関節症は、関節内の慢性炎症と全身の骨密度低下が並行して進む複合的な病態

・幹細胞培養上清液の膝関節注射で狙えるのは関節内の炎症環境の是正であり、骨密度そのものは改善対象ではない

・ビスホスホネート・デノスマブ・テリパラチド・SERM などの骨粗鬆症治療は原則として継続し、関節注射で置き換えない

・軟骨下骨のマイクロ変化や bone marrow lesion が強い症例では、疼痛の出どころを整形外科と共有しつつ評価する

・治療設計の基本は「関節内炎症の是正」と「骨強度の維持」を別レイヤーで並走させ、どちらも取りこぼさないこと

骨粗鬆症合併変形性膝関節症という病態を分けて捉える

関節と骨で『別々の時計』が進んでいる

変形性膝関節症は、関節軟骨・半月板・滑膜の変性と、関節腔内の慢性的な炎症サイクルが中心の病態です。一方、骨粗鬆症は骨代謝バランスの崩れによって骨密度と骨質が低下し、脆弱性骨折リスクが上がる全身の骨代謝疾患です。両者は本来別ものですが、閉経後の女性ではエストロゲン低下という共通のリスク因子を通じて、実際の臨床では非常に高い割合で併存します。骨粗鬆症合併変形性膝関節症では、この『関節の時計』と『骨の時計』が同じ人のなかで同時に進んでいると考えると、治療を組み立てやすくなります。

軟骨下骨のマイクロ変化と痛みのつながり

近年の膝関節痛研究では、関節軟骨表面のすり減りだけでなく、軟骨のすぐ下にある軟骨下骨の microfracture や bone marrow lesion(骨髄浮腫様変化、BML)が、疼痛の発生源として重要視されています。骨粗鬆症合併変形性膝関節症では、軟骨下骨そのものが脆弱になっている背景があり、荷重時のマイクロダメージが蓄積しやすい環境ができ上がっています。X線での軟骨残存量が同程度に見える患者さん同士でも、MRI の T2 マッピングや STIR で軟骨下骨に強いシグナル変化が出ている人ほど、実臨床では膝痛が強い傾向があります。

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幹細胞培養上清液の膝関節注射で狙える範囲・狙えない範囲

狙える:関節内の炎症環境の是正

幹細胞培養上清液には、TGF-β、IGF-1、FGF、HGF、VEGF、各種インターロイキンなど、多種類の成長因子・サイトカイン・エクソソームが含まれます。膝関節腔内に投与することで、慢性化した滑膜炎サイクルにおける炎症性サイトカイン優位のバランスに働きかけ、関節内の炎症環境を落ち着かせる方向に寄与しうる、というのが臨床的な期待です。骨粗鬆症合併変形性膝関節症でも、関節内の疼痛や滑膜炎の要素が主体である局面では、他の変形性膝関節症と同じように膝関節注射の候補になり得ます。

狙えない:骨密度そのものの改善・アライメント異常・骨形態変化

一方で、幹細胞培養上清液の膝関節注射は骨粗鬆症治療ではありません。関節腔内に局所投与された成長因子が、全身の骨代謝を大きく変える・大腿骨や脊椎の骨密度を有意に引き上げる、といった作用は現時点で確立されていません。またO脚・X脚といったアライメントの偏り、末期の骨欠損や骨棘、既に完成した骨形態変化を注射で元に戻すこともできません。これらは装具療法・運動療法・骨切り術・人工膝関節置換術など、別のアプローチが担う領域です。適応と限界を混同しないことが、患者さんの期待値を正しく整える出発点になります。

骨粗鬆症治療との並走設計と実務上の注意

骨粗鬆症薬は原則として継続する

ビスホスホネート、デノスマブ、テリパラチド、ロモソズマブ、SERM、活性型ビタミン D3 など、現在使用中の骨粗鬆症治療薬は、膝関節注射を理由に自己判断で中断しないことが基本です。膝関節注射は関節内の局所治療であり、全身の骨代謝を狙う治療とは別レイヤーだからです。骨代謝は骨粗鬆症薬で、関節内の炎症は膝関節注射で、というように役割分担を明確にしたうえで並走させる設計が理にかなっています。処方元の整形外科・内科と情報を共有しながら進めるのが望ましく、当院でも初診時に現在の内服・注射薬・投与間隔を必ず確認しています。

顎骨壊死(ONJ)リスクと歯科・侵襲的処置との関係

ビスホスホネートやデノスマブを長期使用中の患者さんは、まれではあるものの顎骨壊死のリスクがあり、抜歯などの侵襲的な歯科処置と併せて計画的に管理する必要があります。膝関節注射自体はこのリスクとは独立ですが、骨粗鬆症全体の治療設計上、歯科通院や抜歯予定の有無を共有しておくことは有用です。当院では、骨粗鬆症治療薬の内容・投与間隔・歯科通院の状況を初診で確認し、無理のない併走設計を提案しています。

実際の通院設計と受診の判断

膝関節注射の回数と間隔は、痛みの強さ・変形の進行度・生活動作の制限度・画像所見によって個別に設計します。導入期は短めの間隔で反応を確認し、維持期は間隔を空けていく、というのが一般的な考え方です。ただし、膝の強い夜間痛や急激な腫脹・発熱・体重をかけられないほどの疼痛を伴う場合は、感染性関節炎・脆弱性骨折・急性の骨壊死進行なども念頭に、まず整形外科的な評価を優先します。効果には個人差があり、注射だけで完結する治療ではありません。関節疾患の情報については日本整形外科学会のサイトも参考にしてください。膝関節注射の具体的な内容については、幹細胞培養上清液の関節注射について詳しくはこちらもあわせてご覧いただけます。

よくある質問

Q. 骨粗鬆症の薬を続けたまま幹細胞培養上清液の膝関節注射は受けられますか?

はい、原則として骨粗鬆症治療薬を膝関節注射のために自己判断で中断する必要はありません。膝関節注射は関節内の局所治療で、骨粗鬆症薬は全身の骨代謝を対象とした治療なので、両者は別レイヤーで並走できます。ただし、注射当日の体調・皮膚状態・発熱の有無によっては、安全のため延期することはあります。

Q. 骨密度がかなり低いと膝関節注射のリスクは上がりますか?

関節腔内への上清液注射そのものは骨に直接針を入れる手技ではないため、骨密度が低いこと自体が禁忌にはなりません。ただし、軟骨下骨のマイクロ変化や bone marrow lesion が疼痛に大きく関与しているタイプでは、関節注射のみでは痛みが十分に軽くならないケースもあり、整形外科での画像評価を含めた総合的な設計が必要になります。

Q. 幹細胞培養上清液の膝関節注射で骨密度は上がりますか?

現時点で、関節内投与された幹細胞培養上清液によって全身の骨密度が有意に改善するという確立したエビデンスはありません。骨密度の管理は、骨粗鬆症治療薬・栄養(カルシウム・ビタミンD)・運動で行っていただき、膝関節注射は関節内の炎症コントロールという別の目的で位置づけてください。

Q. 過去に脆弱性骨折の既往があっても膝関節注射は受けられますか?

既往の骨折部位が膝関節から離れており、現在は治癒している場合、通常は膝関節注射の妨げにはなりません。ただし、直近の脆弱性骨折や急性期の骨痛がある場合は、まず整形外科での評価を優先し、注射のタイミングは相談のうえで決定します。

Q. 人工膝関節置換術を勧められていますが、まだ幹細胞培養上清液で粘る意味はありますか?

手術適応と再生医療の適応は必ずしも同一ではありません。手術適応の判断は整形外科でしっかり受けたうえで、それでも保存的な選択肢を試したい場合の一つとして、関節内炎症の是正を狙う膝関節注射を検討する余地はあります。ただし、末期の骨形態変化そのものを注射で戻すことはできない点は、事前にご理解ください。

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【監修】森脇 進 / Shin Moriwaki(監修医師)

日本美容外科学会(JSAS)会員 / American Academy of Aesthetic Medicine 会員

ECFMG Certificate 取得

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