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Columnコラム

脂肪吸引後にCK(クレアチンキナーゼ)値が上昇する理由|横紋筋融解症の初期サインと安全管理を森脇医師が解説2026.08.15

脂肪吸引後の血液検査で「CK(クレアチンキナーゼ)」の数値が普段より高く出ることがあります。これは体のどこかで筋肉細胞が壊れているサインで、極端に上昇する場合は「脂肪吸引横紋筋融解症」という稀ではあるものの重篤な合併症を示唆することがあります。当院AVAN TOKYO銀座脂肪吸引クリニックでは、広範囲吸引や長時間手術を行う症例において、術後のCK値モニタリングと補液管理を重視しています。本コラムでは、なぜ脂肪吸引後にCKが上昇するのか、どんな数値・症状に注意すべきか、そして当院がどのように安全性を担保しているかを、森脇医師が解剖学・生化学の両面から解説します。

この記事の要点

・脂肪吸引横紋筋融解症は極めて稀な合併症ですが、広範囲・長時間手術で発生リスクが上がります。

・CK(クレアチンキナーゼ)は筋肉損傷を示す酵素で、術後は正常上限の数倍まで上がることがあります。

・褐色尿・強い筋肉痛・全身倦怠感・尿量減少は「危険サイン」で、早期の受診連絡が必要です。

・当院では術前検査・術中体位変換・術後補液の3段階でリスクを最小化しています。

・自己判断で市販NSAIDs(ロキソニン等)を使わず、異変を感じたら執刀医に連絡してください。

CK(クレアチンキナーゼ)とは何か

CKは骨格筋・心筋・脳に多く存在する酵素で、筋細胞が損傷を受けると細胞膜の透過性が上がり血中に漏れ出します。健常成人の正常値は男性で約60〜250 U/L、女性で40〜200 U/L程度ですが、激しい運動後や打撲後には一時的に数倍まで上昇することがあります。

脂肪吸引後は、次の理由からCKが軽度〜中等度に上昇するのが一般的です。

・カニューレ(吸引管)が動くことによる周囲組織の物理的損傷

・長時間同一体位による筋圧迫と虚血

・広範囲吸引に伴う全身性の炎症反応

・チュメセント液の大量注入による組織内圧上昇

これ自体は必ずしも異常ではなく、術後3〜7日で自然に低下していきます。問題は、この上昇が「一線を超えた」ときに起こる病態です。

脂肪吸引横紋筋融解症の発症機序

脂肪吸引横紋筋融解症とは、大量の筋細胞が壊れて筋内容物(ミオグロビン・カリウム・CK・リン)が血中に流出し、腎障害や電解質異常を引き起こす病態を指します。海外の症例報告では広範囲吸引(3,000mL以上)の術後に発生した例が散見されます。

主な発症経路は次の3つです。

1. 直接的な筋線維損傷

深層吸引で筋膜面に近づきすぎると、カニューレが筋線維を損傷することがあります。特に線維化の強い部位(背中・男性の腹部・修正部位)ではカニューレが層を外しやすく、危険度が上がります。

2. 圧迫による虚血性損傷

腹臥位や側臥位で長時間手術を続けると、太もも・下腿・胸壁などの筋群が体重で圧迫され虚血に陥ります。血流が再開したときに再灌流障害が起こり、筋細胞のミトコンドリアが機能不全となって細胞死へ進みます(コンパートメント症候群類似の機序)。

3. 全身性炎症反応(SIRS)

広範囲吸引後は全身性の炎症反応が起こりやすく、末梢筋のミトコンドリア機能が低下します。この状態でチュメセント液のリドカインが高濃度に達すると、筋細胞の脱分極異常が加わり壊死が加速することがあります。

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危険な「初期サイン」の見分け方

脂肪吸引横紋筋融解症は初期段階での気付きが極めて重要です。以下の症状は「単なるダウンタイム」ではなく受診検討のサインです。

・褐色〜コーラ色の尿(ミオグロビン尿)

・吸引した部位以外にも及ぶ強い筋肉痛

・38℃以上の発熱が48時間以上続く

・尿量減少(1日500mL未満、または半日排尿なし)

・全身の脱力感・意識のもうろう・吐き気

通常のダウンタイムでは、内出血と圧痛は術後3〜7日でピークに達し、その後徐々に軽快します。「日に日に悪化する痛み」「尿の色の劇的な変化」「明らかな尿量減少」の3つが揃った場合は要注意です。

当院AVAN TOKYOの安全管理体制

脂肪吸引横紋筋融解症を防ぐため、当院では次の対策を段階的に行っています。

術前評価

血液検査でCK・BUN・クレアチニン・電解質・CK-MBを測定し、既存の筋疾患・腎疾患をスクリーニングします。スタチン内服中の方(薬剤性横紋筋融解症のリスク)は主治医と相談の上で事前休薬を検討します。運動習慣・アルコール量・遺伝性筋疾患の家族歴も詳細に確認します。

術中管理

・体位変換を1〜2時間ごとに実施し、同一体位の連続時間を制限

・骨突起部(膝・肘・腸骨稜)に減圧パッドを配置

・チュメセント液のリドカイン濃度を安全域(35mg/kg以下、多くの症例で28mg/kg以下)に厳守

・持続的なバイタル・尿量・体温モニタリング

・広範囲症例では血液ガス分析による代謝性アシドーシスの早期発見

術後管理

・積極的な補液で尿量を0.5mL/kg/h以上に維持

・広範囲症例では翌日CK再検を実施

・退院後も異変時24時間LINE相談が可能

・術後1週間はアルコール禁止・水分2〜2.5L/日を推奨

美容外科の安全基準や周術期管理については日本美容外科学会のガイドラインも参照してください。

患者さんが自宅でできること

術後の脂肪吸引横紋筋融解症予防には、患者さんご自身の協力が欠かせません。以下の項目を意識してください。

・退院当日から水分を1日2〜2.5L意識的に摂取する(脱水が最大の増悪因子)

・尿の色を1日数回チェックする(麦茶色以上の濃さが続く場合は連絡)

・処方鎮痛薬以外の市販NSAIDs(ロキソニン・イブプロフェン等)は自己判断で使わない

・アルコールは最低1週間避ける(脱水と肝代謝負荷を招く)

・激しいマッサージ・筋トレは術後2週間以内は控える

・処方されたビタミン剤・鉄剤は指示通りに服用する

CK上昇はすべてが横紋筋融解症ではない

「CKが基準値の5倍でした」と聞くと不安になりますが、脂肪吸引後の中等度上昇(1,000〜5,000 U/L)は多くのケースで無症状のまま自然に改善します。国際的な診断基準としての横紋筋融解症は「CK 5,000 U/L以上、または正常上限の5倍以上」かつ「筋症状・ミオグロビン尿・腎機能低下のいずれか」を伴うものと定義されています。

つまり、数値だけで一喜一憂せず、症状と組み合わせて評価することが重要です。当院では術後CK値だけを見るのではなく、尿量・尿色・電解質・腎機能を総合的に判断し、必要に応じて追加補液や連携医療機関への紹介を判断します。

脂肪吸引横紋筋融解症のリスクが高い方

以下に該当する方は、術前カウンセリングで詳細な相談をおすすめします。

・BMI30以上で広範囲吸引を希望される方

・スタチン系(コレステロール薬)を内服中の方

・甲状腺機能低下症や副腎機能低下症の既往がある方

・過去に運動後の強い筋肉痛や褐色尿を経験したことがある方

・アルコール多飲習慣がある方

・悪性高熱症・遺伝性筋疾患の家族歴がある方

・全身麻酔を伴う4時間以上の手術を予定している方

これらの方でも脂肪吸引が受けられないわけではなく、リスクを把握した上で麻酔法・吸引範囲・術後管理を最適化することで安全に施術可能なケースが大半です。

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よくある質問

Q. CK値はいつ測定してもらえますか?

当院では術前検査と、広範囲症例では術翌日にも採血を行います。ご希望があれば術後7日診察時にも追加測定可能です。数値の推移をグラフでお見せし、正常化までフォローします。

Q. 尿の色が濃いのですが、水分を飲めば大丈夫ですか?

朝一番の尿がやや濃いのは正常範囲ですが、日中もコーラ色や紅茶色が持続する場合は早めにご連絡ください。自己判断で様子見せず、必要な場合は救急外来受診を優先していただきます。

Q. スタチンを飲んでいますが、脂肪吸引は受けられますか?

可能ですが、術前1〜2週間の休薬を処方医と相談していただきます。スタチンは筋細胞のCoQ10合成を阻害し、横紋筋融解症リスクをわずかに高める可能性があるためです。休薬可否は必ず主治医の判断を仰いでください。

Q. 横紋筋融解症になったら、どんな治療をしますか?

軽症では点滴による大量補液と尿アルカリ化(重炭酸ナトリウム投与)で改善します。腎障害を伴う中等症以上では入院管理となり、稀に一時的な血液透析が必要になることもあります。だからこそ早期発見が最も重要です。

Q. 二の腕や顔だけの吸引でも起こりますか?

局所的な吸引で発症するのは極めて稀です。脂肪吸引横紋筋融解症の多くは、体幹〜四肢の広範囲吸引(3,000mL以上)や長時間手術で報告されています。二の腕・顎下・膝など小範囲であれば、健常者ではまず心配ありません。

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【監修】森脇 進 / Shin Moriwaki(監修医師)

日本美容外科学会(JSAS)会員 / American Academy of Aesthetic Medicine 会員

米国医師免許資格(ECFMG certificate)

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