肩の夜間痛で眠れない|五十肩の炎症期に注射で狙えること2026.10.13
「夜中に肩がうずいて目が覚める」「寝返りを打つたびに激痛が走り、朝まで眠れない」──五十肩の夜間痛は、昼間の痛みよりも生活への影響が大きい症状として知られています。これは五十肩(肩関節周囲炎)の「炎症期」に強く現れるもので、関節内滑膜炎・関節包炎・腱板周囲の炎症が重なって生じる、夜間特有の痛みです。本稿では、この夜間痛がなぜ眠れないほど強いのか、炎症期にどんな機序が働いているのか、そして関節注射で狙える範囲について、森脇医師が整形外科的な視点から整理します。
この記事の要点
・五十肩の夜間痛は「炎症期」に特徴的で、関節内の滑膜炎・関節包炎・腱板周囲の炎症が重なって生じる
・睡眠時は肩が内旋位になり、腱板の血流低下と関節内圧の上昇が加わるため夜間に増悪する
・炎症期の関節注射は可動域改善より先に「痛みの発生源を鎮める」ことを狙う処置である
・拘縮期(可動域制限が主体)になると注射の狙いが変わるため、病期の見極めが前提になる
・睡眠姿勢・寝具・内服・リハビリを多層的に組み合わせることで夜間痛を段階的に減らせる
五十肩の夜間痛で眠れないのはなぜか
五十肩の夜間痛は、単に「肩が炎症を起こしているから痛い」というだけでは説明できません。関節包・滑膜・腱板・肩峰下滑液包という複数の構造が同時に炎症を起こしているうえ、就寝時の姿勢がその痛みを増幅させるからです。
日中は腕をわずかに動かすたびに関節液が循環し、関節包の緊張も変化します。しかし寝ているあいだは一定の姿勢で長時間同じ場所に圧がかかり、関節液の循環が滞ります。横向きで下になった肩には体重がかかり、仰向けでは重力で肩甲骨が後方に落ちることで肩関節が内旋位になります。この内旋位では腱板(とくに棘上筋腱)が肩峰の下に押しつけられ、血流が低下します。この「夜間特有の血流低下」と「関節内圧の上昇」が、炎症期の痛覚神経を過敏にし、安静にしているはずの夜中にずきずきとした痛みを生むのです。
炎症期と拘縮期で痛みの出方は違う
五十肩は病期によって症状と治療の狙いが変わります。炎症期は夜間痛と安静時痛が主体で、動かさなくても痛みがあり、夜中に目が覚めるのが特徴です。拘縮期になると可動域制限(結帯動作・結髪動作ができない)が中心になり、夜間痛は徐々に軽快していきます。
つまり「眠れないほどの肩の夜間痛」は多くの場合、まだ炎症期にいることを示唆するサインです。この時期に無理に動かすリハビリを強行すると、むしろ炎症が悪化し、拘縮期への移行を長引かせる可能性があります。

五十肩の夜間痛に関節注射で狙えること
炎症期の肩関節注射は、関節内と肩峰下滑液包、場合によっては上腕二頭筋長頭腱の腱鞘周囲など、炎症が重なり合っている局所に薬剤を届ける処置です。狙いは可動域の改善よりもまず「痛みの発生源を鎮める」こと。眠れるようになることで、組織修復に必要な夜間の副交感神経優位な時間を取り戻すこと自体が、治療の意義として大きいのです。
関節疾患全般の情報については日本整形外科学会も参照してください。
注射で狙える3つの構造
炎症期の肩関節注射で主に狙うのは、①関節内(滑膜炎・関節包炎)、②肩峰下滑液包(腱板上面の摩擦炎症)、③長頭腱腱鞘(結節間溝の腱炎)の3カ所です。どこに炎症の主体があるかで注入部位の優先順位が変わります。盲目的穿刺では関節外への誤注入が起こり得ますが、エコーガイド下に針先を可視化しながら穿刺することで、炎症の中心に薬剤を届けやすくなります。
幹細胞培養上清液という選択肢
ステロイドは炎症期の夜間痛軽減に即効性がありますが、繰り返しによる腱・軟骨への影響が懸念されます。幹細胞培養上清液は、炎症性サイトカインを抑えつつ組織修復を促す成長因子を含むため、糖尿病で血糖上昇を避けたい方、腱板部分断裂を併発している方など、ステロイドを控えたい症例の選択肢になります。幹細胞培養上清液の関節注射について詳しくはこちら。
注射以外に夜間痛を軽減する多層設計
注射で炎症の底上げを抑えても、就寝時の姿勢や寝具の設計がかみ合っていなければ、夜間痛は十分には軽減しません。炎症期の肩には「内旋位にしない」「下に敷かない」が原則です。
横向き寝では痛い側を上にして、胸の前に抱き枕を挟み、肩が前方に落ち込まないよう支えます。仰向け寝では、肩甲骨の下に薄いタオルを一枚入れて肩がベッドに沈み込まないようにし、肘から前腕にかけてクッションを置いて腕の重みを分散させます。
さらに、就寝前30分の冷罨法(氷のうを5〜10分当てる)で表層の炎症を鎮める、消炎鎮痛薬(NSAIDs)を就寝1時間前に内服する、といった工夫を組み合わせることで、注射による鎮痛と相乗的に働きます。これらは一つひとつの効果は限定的でも、「夜間に肩を刺激しない設計」として積み重なります。
よくある質問
Q. 五十肩の夜間痛はどれくらいで治まりますか?
炎症期は一般に2〜9か月程度続きますが、個人差が大きく予測は困難です。関節注射・内服・睡眠姿勢の工夫を組み合わせると、夜間痛が最初に軽快し、次に日中の安静時痛、最後に可動域制限(拘縮)が改善していく経過をたどることが多く見られます。
Q. 肩関節注射は痛みますか?何回打つのが一般的ですか?
細い針を用いてエコーガイド下に穿刺すれば、強い痛みなく施行可能です。炎症期では2〜4週間おきに2〜3回を目安に反応を評価し、効果と副作用のバランスを見ながら頻度を調整します。幹細胞培養上清液の場合は、より少ない回数で導入期を設計することが一般的です。
Q. 夜間痛が消えてからリハビリを始めるべきですか?
炎症が強い時期に大きな可動域訓練を強行すると、炎症が悪化する可能性があります。一方で、無動のまま放置すると拘縮を助長します。夜間痛が落ち着いてきた段階で、可動域の範囲内の自動運動から段階的に始めるのが安全です。整形外科医・理学療法士と相談しながら進めてください。
Q. 糖尿病があってもステロイド以外の選択肢はありますか?
糖尿病で血糖上昇が気がかりな方には、幹細胞培養上清液やヒアルロン酸の肩関節注射が選択肢になります。症状の強さ・画像所見・併存疾患を踏まえ、担当医と相談のうえで選択してください。
Q. 五十肩と腱板断裂は見分けられますか?
症状が似ていても治療方針は大きく異なります。腱板断裂を見落として炎症期の五十肩として注射だけを続けると、断裂が進行する可能性があります。初診時にエコーやMRIで腱板の連続性を確認してもらうことが重要です。
──────────────
関連記事
- O脚が進んだ膝で何が起きる?内反変形性膝関節症と注射の限界
- 複数の関節に一度に注射できる?投与量と全身影響を森脇医師が解説
- 変形性膝関節症の骨棘は取り除くべき異物なのか?体が作った構造としての意味と注射で狙える範囲
【監修】森脇 進 / Shin Moriwaki(監修医師)
日本美容外科学会(JSAS)会員 / American Academy of Aesthetic Medicine 会員
ECFMG Certificate 取得
──────────────
📍AVAN TOKYO 銀座 関節再生医療
AVAN TOKYO Ginza Joint Regenerative Medicine
English / 中文 / Tiếng Việt 対応可能
ご相談は DM / LINE / Website / Phone より承っております。