コラム

NSAIDs長期服用で胃や腎臓が心配な人の関節治療を森脇医師が解説2026.09.11

慢性的な膝や腰の痛みで、痛み止め(NSAIDs)を毎日のように飲み続けている方は少なくありません。ところが胃薬の常用や、健診での腎機能の指摘をきっかけに「このまま飲み続けて大丈夫だろうか」と不安を感じ、なんとか痛み止めから抜けたいと考える方が増えています。NSAIDs長期服用は、消化管出血や慢性腎障害のリスクを段階的に高めるため、医学的にも「ずっと続けたい薬」ではありません。本稿では、NSAIDs長期服用が身体に何をしているのかを整理したうえで、幹細胞培養上清液を用いた関節注射という代替の選択肢について、森脇医師の視点から解説します。

この記事の要点

・NSAIDs長期服用は胃粘膜障害と腎機能低下のリスクを段階的に高める

・「痛みを一時的に消す」だけの発想では薬から抜けにくく、関節内の炎症環境そのものにアプローチする視点が要る

・幹細胞培養上清液の関節注射は、抗炎症作用と組織修復環境の整備を同時に狙う治療で、胃・腎臓への全身負担が乏しい

・薬をゼロにできなくても、頓服で乗り切れる頻度まで戻すことは現実的な目標

・胃と腎臓を守りながら関節を長く使うには、注射・運動療法・体重管理を組み合わせた治療設計が要る

NSAIDs長期服用は胃と腎臓に何をしているのか

NSAIDs(非ステロイド性抗炎症薬)はロキソプロフェン、ジクロフェナク、セレコキシブなど広く使われる痛み止めです。膝・腰・肩の慢性痛で整形外科にかかると処方されることが多く、市販薬としても入手できるため、気づけば年単位で飲み続けているというケースは珍しくありません。

胃粘膜障害が起きる仕組み

NSAIDsはシクロオキシゲナーゼ(COX)を阻害して痛みと炎症を抑えます。しかしCOX-1は胃粘膜を守るプロスタグランジンの産生にも関わっているため、これを抑えると胃粘膜の血流と粘液分泌が落ちます。結果としてNSAIDs潰瘍と呼ばれる胃十二指腸潰瘍が生じ、進行すると消化管出血につながります。ヘリコバクター・ピロリ感染、高齢、抗凝固薬の併用があるほどリスクは跳ね上がるため、複数の薬を持病で飲んでいる方ほど注意が必要です。

腎機能が下がる仕組み

腎臓の糸球体は、輸入細動脈が拡張して血流を保つことで濾過機能を維持しています。この拡張にはプロスタグランジンが関与しており、NSAIDs長期服用はこの調整を邪魔します。脱水・心不全・高齢・利尿薬の併用があるとNSAIDs関連腎障害が起こりやすく、慢性腎臓病(CKD)の進行を早めることが知られています。健診でクレアチニンが徐々に上がっている、eGFRが下がってきているという指摘があった方は、痛み止めの見直しが必要です。日本整形外科学会も、慢性関節痛に対するNSAIDsの漫然とした長期投与を避ける方針を示しています。

膝の痛み・炎症の注射治療

「飲めば効く薬」から抜けにくい構造

NSAIDs長期服用から抜けにくい最大の理由は、飲めば数時間で痛みが引き、生活が回る、という即時効果にあります。関節の変性や慢性炎症そのものは薬で治っているわけではなく、痛みだけを一時的に消しているのですが、日々を回すためには手放しにくい薬なのです。

「炎症を抑える」だけでは環境は変わらない

変形性膝関節症や慢性腰痛では、関節内で炎症性サイトカイン(IL-1β・TNF-α など)が持続的に産生され、軟骨や滑膜を傷めていく悪循環が形成されます。痛み止めはこの悪循環の下流にある「痛み」を抑えるものの、上流の関節内環境そのものにアプローチはしません。薬を止めた瞬間に痛みが戻るのはこのためで、飲み続けなければ生活が回らない、という依存的な使い方に陥りやすくなります。

湿布・ステロイド注射との違い

湿布(外用NSAIDs)は全身への吸収が少ない一方で、慢性の関節痛には十分な鎮痛が得られないことが多いのが実情です。ステロイド関節注射は強力に炎症を抑えますが、頻回に打つと軟骨や腱への負担が指摘されており、こちらも「長く繰り返す治療」には向きません。同じ場所を守るはずが、袋小路に入ってしまう選択肢とも言えます。

幹細胞培養上清液の関節注射という代替の選択肢

幹細胞培養上清液は、間葉系幹細胞を培養した際にその細胞が分泌したサイトカイン・成長因子・エクソソームを含む液体成分です。細胞そのものを注入するのではなく「細胞が分泌した働きかけ因子」を利用する治療で、抗炎症作用と、組織修復環境の整備を同時に狙える点が特徴です。幹細胞培養上清液の関節注射について詳しくはこちらもあわせてご覧ください。

「炎症を抑える」+「環境を整える」の二段構え

上清液に含まれるTGF-β・IGF-1・HGFなどは、炎症性サイトカインの働きを抑えつつ、軟骨細胞・滑膜細胞に対して修復方向のシグナルを促すことが基礎研究で示されています。飲み薬が「痛みを一時的に消す」ものであるのに対し、上清液は「関節内で炎症の生まれる環境を落ち着かせる」ことを狙う治療です。効果の立ち上がりは注射後2〜4週かけて緩やかに現れる方が多く、薬を減らせるだけの土台を作りにいく治療、と表現するのが誠実です。

胃と腎臓への全身負担が乏しい

上清液は関節内へ局所投与するため、全身循環に入るNSAIDsのような胃粘膜・腎臓への負担は基本的に想定されません。高齢者、CKD既往、胃潰瘍既往、抗凝固薬内服中など、NSAIDs長期服用のリスクが高い方こそ検討する意義がある治療です。ただし活動性感染がある関節、末期の関節破壊、全身状態が不安定な方には向きません。適応判断は診察・画像評価・採血データを組み合わせて慎重に行います。

薬から抜けるための治療設計

痛み止めから急に離れようとすると痛みが戻り、また薬を増やしてしまう悪循環に陥ります。目標を「ゼロにする」ではなく「頓服で乗り切れる状態に戻す」に置き直すことが、現実的な出口設計になります。

関節注射・運動療法・体重管理を並走させる

上清液の関節注射だけで薬を切れるわけではありません。大腿四頭筋を中心とした運動療法、体重管理、装具や杖といった「守り」の要素、必要に応じたヒアルロン酸注射や短期のステロイド注射など、複数の手段を組み合わせることで、痛み止めの服用頻度は段階的に下げやすくなります。ここで無理をしないことが、逆説的に一番の近道です。

「飲まない日」を作ってから減らす

NSAIDs長期服用中の方には、まず「飲まない日を作れる状態」まで痛みを落とすことを最初の目標に置きます。ベースの痛みが下がってきたら、頓服として週に数回だけ使う運用に切り替え、そのうえで胃薬(PPI・H2ブロッカー)も内科と連携して減らしていきます。急激な中止ではなく、胃症状と腎機能を採血で追いながら段階的に下げるのが安全です。関節注射のあと数日は、痛みの再燃や運動負荷を避け、経過を医師と共有しながら次の一手を決めていきましょう。

よくある質問

Q. 痛み止めを毎日飲んでいますが、上清液の関節注射を受けたら薬をやめられますか?

必ずしも全員がゼロにできるわけではありません。多くの方は「頓服で数日に1回」まで下げられれば、胃と腎臓への負担は大きく減ります。ゼロにすることより「安全に飲める頻度に戻す」ことを目標にしましょう。

Q. すでに慢性腎臓病(CKD)と言われています。上清液の関節注射は受けられますか?

上清液は関節内への局所投与であり、腎臓への直接的な負担は基本的に想定されません。CKDでNSAIDsを長く続けにくい方こそ、選択肢として検討する意義があります。ただし活動性感染や全身状態によっては見送るため、腎臓内科と連携しながら判断します。

Q. 効果はいつごろから、どのくらい続きますか?

関節や病期によりますが、注射後2〜4週で日常動作の痛みが軽くなってくる方が多く、数か月〜半年ほど効果が持続する例が報告されています。導入期(初回2〜3回)を短めの間隔で行い、その後に維持期へ移行する二相設計が一般的です。

Q. ステロイド関節注射とはどう違いますか?

ステロイドは強力に炎症を抑えますが、頻回に打つと軟骨や腱への影響が指摘され、繰り返しにくい治療です。上清液は炎症抑制に加え、関節内環境の整備を狙うため、長い目で見た「粘る治療」に向く選択肢です。

Q. 保険は使えますか?

再生医療等安全性確保法に基づく自由診療のため、公的医療保険は使えません。費用は総額で判断すること、通院回数や維持期の頻度も含めて事前に見積もりを確認することが大切です。最終的な合計金額はカウンセリングで確定します。

──────────────

関連記事

【監修】森脇 進 / Shin Moriwaki(監修医師)

日本美容外科学会(JSAS)会員 / American Academy of Aesthetic Medicine 会員

ECFMG Certificate 取得

──────────────

📍AVAN TOKYO 銀座 関節再生医療

AVAN TOKYO Ginza Joint Regenerative Medicine

English / 中文 / Tiếng Việt 対応可能

ご相談は DM / LINE / Website / Phone より承っております。