LINE予約
Columnコラム

脂肪吸引後の肥厚性瘢痕にケナコルト®注射は効くのか|ステロイド局注の適応・投与間隔・副作用を森脇医師が解説2026.08.07

脂肪吸引の吸引孔(ポート創)は通常3〜5mmの点状の傷にすぎませんが、体質や術後ケア次第では赤く盛り上がる「脂肪吸引肥厚性瘢痕」へと変化してしまうことがあります。当院では、こうした術後の瘢痕に対する治療選択肢のひとつとして、副腎皮質ステロイドの局所注射「ケナコルト®(一般名:トリアムシノロンアセトニド)」を用いることがあります。しかし「ステロイド」という語感から不安を抱かれる方も少なくありません。本コラムでは、脂肪吸引肥厚性瘢痕に対するケナコルト注射の作用機序、投与間隔、副作用、そして他の治療選択肢との位置づけを、森脇医師の視点から医学的に解説します。

この記事の要点

・脂肪吸引肥厚性瘢痕とは、吸引孔や強い牽引がかかった部位に生じる赤く硬く隆起した傷跡で、ケロイドと異なり原則として元の傷の範囲を超えては広がらない。
・ケナコルト®はコラーゲン産生を抑え、既存の瘢痕組織を分解する方向へ働き、脂肪吸引肥厚性瘢痕の平坦化に用いられる。
・投与間隔は4〜6週間ごと、平均3〜5回で改善が得られることが多いが、体質と隆起の厚みに応じて濃度を調整する。
・皮膚萎縮・毛細血管拡張・色素脱失などの副作用があり、注入量と深度の精密なコントロールが不可欠。
・脂肪吸引後の一般的な拘縮(線維化)そのものが治療対象ではなく、瘢痕の「隆起」「赤み」「強い硬結」に限定される。

肥厚性瘢痕とケロイドはどう違うのか

脂肪吸引後の傷跡トラブルとして混同されがちなのが「肥厚性瘢痕」と「ケロイド」です。両者は見た目が似ていても、病態も治療方針も大きく異なります。肥厚性瘢痕は元の傷の範囲内にとどまり、時間経過とともに徐々に軟化・退縮する傾向があります。一方ケロイドは元の傷の輪郭を越えて広がり、自然消退はほとんど期待できません。脂肪吸引の吸引孔は数ミリの点状創であるため、体質的なケロイド素因がなければ、多くは肥厚性瘢痕の範囲内にとどまります。ただし体位変換や圧迫、ドレナージチューブによる牽引が加わると、局所的に強く盛り上がる例が見られます。

ケナコルト®(トリアムシノロンアセトニド)とは

ケナコルト®は合成副腎皮質ステロイドで、局所に注射することで長時間にわたって抗炎症・抗線維化作用を発揮します。日本では肥厚性瘢痕・ケロイドへの保険適用があり、皮膚科・形成外科・美容外科で広く使用されている薬剤です。40mg/mLの製剤を、生理食塩水やキシロカインで希釈し、10〜20mg/mL程度の濃度に調整して用いることが一般的です。当院では病変の厚み・部位・患者様の年齢を踏まえ、必要最小限の濃度と量を設定します。

脂肪吸引 肥厚性瘢痕 ケナコルト

脂肪吸引肥厚性瘢痕に効く医学的メカニズム

ケナコルト®の抗瘢痕効果は、主に3つの経路で説明されます。第一に、線維芽細胞におけるI型・III型コラーゲンの新規産生を抑制すること。第二に、コラゲナーゼ活性を相対的に上昇させ、既に沈着した過剰なコラーゲン束を分解する方向へ導くこと。第三に、TGF-β1をはじめとする炎症・線維化促進サイトカインの発現を下げ、瘢痕形成のスイッチを弱めることです。これら3つの作用が組み合わさることで、盛り上がった瘢痕が徐々に平坦化し、赤みも退色していきます。

投与量・投与間隔・治療期間の実際

脂肪吸引肥厚性瘢痕へのケナコルト注射は、隆起の中央部(真皮内〜真皮直下)にごく少量ずつ注入するのが基本です。1病変あたり0.1〜0.5mL程度を目安に、4〜6週間隔で施行します。1回で劇的な変化を狙うのではなく、複数回で段階的に平坦化させる方が副作用リスクを抑えられます。多くの症例では2〜3回目で明らかな軟化と退色が確認でき、平均3〜5回で治療終了となります。効果が乏しい場合はレーザーや外用薬との併用を検討します。

知っておくべき副作用とリスク

最も頻度が高い副作用は「皮膚萎縮」と「毛細血管拡張」です。深く注入しすぎたり、濃度が高すぎたりすると、瘢痕が凹んだり周囲皮膚が薄くなって毛細血管が透けて見えることがあります。次に多いのが「色素脱失(白斑様変化)」で、特に色素の濃い部位に生じやすい傾向があります。また、大量・頻回投与では月経不順・満月様顔貌などの全身性副作用も理論上あり得ますが、脂肪吸引の吸引孔レベルの少量では稀です。妊娠中・授乳中の投与は原則避けます。美容外科の安全基準については日本美容外科学会の情報も参考にしてください。

ケナコルト以外の選択肢と併用療法

すべての脂肪吸引肥厚性瘢痕がケナコルト単独で改善するわけではありません。第一選択として、シリコンジェルシートによる1日12時間以上の圧迫・保湿を3ヶ月継続する保存療法があります。血管拡張と赤みが強い症例では、色素レーザー(Vビーム等)が有効です。難治例には5-FUとの混合注射、真皮縫合を伴う瘢痕形成術も検討します。当院では術後3ヶ月時点で瘢痕を評価し、シリコンジェル・ケナコルト・レーザーを組み合わせて最小侵襲で改善を目指しています。

AVAN TOKYOでの運用と患者様へのお願い

当院では脂肪吸引の術後3ヶ月〜6ヶ月の間に、吸引孔と癒着部の状態を診察でチェックしています。肥厚性瘢痕の傾向が見られた場合、まずシリコンジェルシートによる保存療法を提案し、それでも隆起が引かない場合にケナコルト注射を導入します。過度な期待や自己判断による大量注入は皮膚萎縮を招くため、必ず担当医の管理下で計画的に行うことが重要です。関連する術後経過については脂肪吸引の関連コラム一覧はこちらもご覧ください。

よくある質問

Q. ケナコルト注射は痛いですか?

局所麻酔剤(キシロカイン)と混合して注射することが多く、痛みは軽減されています。ただし瘢痕組織は硬いため、通常の皮下注射より圧を感じやすい傾向があります。

Q. 何回打てば効果が出ますか?

多くの症例で2〜3回目から軟化と退色が確認でき、平均3〜5回で治療終了となります。隆起の厚みや体質により個人差があります。

Q. 副作用が出た場合は元に戻りますか?

皮膚萎縮や毛細血管拡張は多くの場合、時間経過で数ヶ月〜1年程度で軽快しますが、完全に元に戻らないこともあります。だからこそ最小限の濃度で慎重に施行することが重要です。

Q. 妊娠中や授乳中でも受けられますか?

原則として妊娠中・授乳中のケナコルト注射は避けます。局所投与とはいえ全身への影響がゼロではないため、必ず担当医に妊娠の可能性を伝えてください。

Q. 保険適用になりますか?

肥厚性瘢痕・ケロイド治療としては保険適用ですが、美容外科手術の術後経過に対する処置として行う場合は自費診療の枠組みで対応することが一般的です。

──────────────

関連記事

【監修】森脇 進 / Shin Moriwaki(監修医師)

日本美容外科学会(JSAS)会員 / American Academy of Aesthetic Medicine 会員

米国医師免許資格(ECFMG certificate)

──────────────

📍AVAN TOKYO 銀座脂肪吸引クリニック

AVAN TOKYO GINZA LIPOSUCTION CLINIC

English / 中文 / Tiếng Việt 対応可能

ご予約・ご相談は

DM / LINE / Website / Phone より承っております。