変形性肩関節症とは?60代以降にじわじわ進む肩の痛みと五十肩との違い、関節注射2026.07.29
「肩が上がらない」「夜間に肩が疼いて眠れない」と受診した60代以降の患者さんに、五十肩ですねと説明されるケースは多いのですが、その痛みの背景に変形性肩関節症(肩甲上腕関節の一次性関節症)が潜んでいることは少なくありません。五十肩がおおむね1〜2年の経過で自然に軽快していく傾向があるのに対し、変形性肩関節症は軟骨のすり減りと関節裂隙狭小化がゆっくり進行するため、経過も治療設計も本来別物として考える必要があります。本記事では、この2つを見分けるための臨床的な視点と、幹細胞培養上清液の肩関節注射で狙える範囲・狙えない範囲を、AVAN TOKYO 銀座の森脇医師の視点で誠実に整理します。
この記事の要点
・変形性肩関節症は60代以降に多く、肩甲上腕関節の軟骨がすり減り関節裂隙が狭くなる進行性の疾患である。
・症状は五十肩と重なりやすいが、五十肩は自然回復傾向があるのに対し、変形性肩関節症は自然回復しない。
・診断の柱は単純X線での関節裂隙狭小化・下方骨棘・軟骨下骨硬化の確認である。
・幹細胞培養上清液の肩関節注射は関節内の滑膜炎・炎症環境に働きかけることを狙う治療で、すり減った軟骨そのものを再生させる治療ではない。
・関節破壊が高度な例・腱板広範囲断裂例・活動性感染例では適応外で、人工肩関節置換術など整形外科的介入の検討が優先される。
変形性肩関節症とはどのような疾患か
変形性肩関節症は、上腕骨頭と肩甲骨関節窩からなる肩甲上腕関節の軟骨がすり減り、関節裂隙が狭くなり、骨棘や軟骨下骨硬化を伴いながら進行していく疾患です。膝関節や股関節と比べると頻度は少なく見られがちですが、単純X線・超音波・MRI評価が普及した現在では、60代以降の慢性肩痛の少なくない割合を占めることが認識されつつあります。荷重関節ではない一方で、可動域の広さが要求される関節であるため、軟骨のすり減りや骨棘形成がわずかに進むだけでも結髪動作・結帯動作・頭上動作といった日常動作を強く制限します。
五十肩(凍結肩)との違い
五十肩(肩関節周囲炎、凍結肩、frozen shoulder)は、40〜60代を中心に発症し、炎症期・拘縮期・回復期の3相を経ておおむね1〜2年の経過で自然に軽快していく傾向があります。一方の変形性肩関節症は自然回復しません。両者はいずれも夜間痛と可動域制限を示すため、初診時点の問診と診察だけで見分けるのは容易ではありません。単純X線で関節裂隙を評価することが、両者を切り分ける最初の一歩になります。
関節裂隙狭小化と下方骨棘というサイン
変形性肩関節症の画像所見として典型的なのは、関節裂隙狭小化(joint space narrowing)、下方骨棘(inferior osteophyte、いわゆるgoat’s beard sign)、軟骨下骨硬化、時に関節内遊離体です。関節裂隙が保たれている段階ならまだ選択肢は広いですが、上腕骨頭が関節窩に接触して裂隙がほぼ消失している段階では治療戦略が大きく変わってきます。

症状と診断の流れ
臨床の入り口は、数か月〜数年かけてじわじわ進行する肩の運動時痛と可動域制限です。とくに外旋制限(結髪動作の困難)と外転制限(頭上動作の困難)が目立ちます。仰臥位で肩を横に投げ出せない・寝返りで痛みで目が覚めるといった夜間痛が出てくると、関節内の炎症コントロールが必要な段階に入っていると考えます。関節疾患の情報については日本整形外科学会のガイドライン等も参照しながら、個別の適応を判断していきます。
可動域制限の出方
変形性肩関節症では、他動的にも自動的にも同程度に可動域が落ちるのが特徴です。ここは五十肩の拘縮期と重なる部分でもあり、可動域評価だけで両者を鑑別するのは難しいことがあります。関節裂隙がすでに狭小化している段階では、無理な可動域訓練で疼痛が増悪しやすいため、リハビリの強度設計にも注意を要します。
画像診断で確認するポイント
単純X線正面像・軸位像で関節裂隙・下方骨棘・軟骨下嚢胞の有無を確認し、必要に応じてMRIで滑膜炎の程度や腱板の状態を評価します。腱板の広範囲断裂を合併し上腕骨頭が上方偏位したcuff tear arthropathyの段階まで進んでいる場合には、治療設計が根本から変わることになります。
幹細胞培養上清液の肩関節注射で狙える範囲
幹細胞培養上清液は、幹細胞を培養した培養液(分泌物)を精製した製剤で、抗炎症性サイトカインやIGF-1・TGF-β・HGFなどの成長因子を含みます。変形性肩関節症に対する肩関節注射で期待されるのは、関節内の滑膜炎コントロールと、関節環境の炎症性サイトカインバランスを整えることです。
作用機序と想定される反応
変形性関節症の疼痛は、軟骨そのものよりも滑膜炎とIL-1β・TNF-αを中心とする炎症性サイトカイン環境に由来する部分が大きいことが分かってきています。幹細胞培養上清液の肩関節注射は、この炎症カスケードのバランスに働きかけることが機序として想定されています。ただし、すり減った軟骨や消失した関節裂隙が元に戻る治療ではないため、期待値は「炎症と疼痛のベースラインを整え、可動域訓練を進めやすい状態をつくる」ことに置く必要があります。
適応外・限界と誠実な線引き
関節破壊が高度で上腕骨頭と関節窩が骨性に接触している例、腱板広範囲断裂を伴うcuff tear arthropathy、活動性の化膿性関節炎、コントロール不良の全身性疾患を持つ患者さんでは、変形性肩関節症であっても幹細胞培養上清液の肩関節注射は第一選択にはなりません。整形外科的評価に基づき、人工肩関節置換術(TSA・リバース型TSA)を含む選択肢を検討することが優先されます。
他の関節注射・保存療法との比較と併用設計
軽症〜中等症の変形性肩関節症では、まず内服NSAIDs、可動域と肩甲胸郭リズムを整える運動療法、必要に応じたステロイド肩関節注射やヒアルロン酸注射が選択肢に上がります。ステロイドは強力な抗炎症作用を持つ一方で、繰り返し投与に伴う軟骨・腱への影響が懸念されるため、間隔と回数の設計が重要です。幹細胞培養上清液の肩関節注射は、既存治療との併用や、ステロイドを繰り返したくない患者さんの選択肢として位置づけられます。関連する治療背景については幹細胞培養上清液の関節注射について詳しくはこちらもご覧ください。
いずれの選択肢も「注射だけ」で完結させず、外旋筋群と肩甲胸郭関節の可動性を保つ運動療法を並行することが、長期的な肩機能維持には欠かせません。
よくある質問
Q. 変形性肩関節症と五十肩は自分で見分けられますか?
症状の重なりが大きいため、自己判断は難しいのが実情です。60代以降の肩痛でとくに外旋制限が強く、動きの制限が数か月以上ゆっくり進行している場合には、単純X線での関節裂隙評価を早めに受けることをおすすめします。
Q. 幹細胞培養上清液の肩関節注射で軟骨は元に戻りますか?
すり減った軟骨や消失した関節裂隙が元に戻る治療ではありません。狙いは関節内の炎症環境を整え、疼痛のベースラインを下げることに置きます。効果には個人差があり、進行度によって期待できる範囲は変わります。
Q. 何回くらい注射を受けるのが目安ですか?
病期・疼痛・可動域を評価しながら回数と間隔を設計します。導入期に複数回、その後は経過に応じて維持間隔を空けるのが一般的な考え方ですが、反応が乏しい場合には継続・変更・整形外科的再評価に切り替える判断も重要です。
Q. すでに手術を勧められていますが、まだ注射で粘れますか?
関節破壊の進行度、疼痛による生活動作の障害度、年齢・活動性など複数の要素を総合して判断します。人工肩関節置換術が妥当なステージでは、注射で粘り続けることが必ずしも患者さんの利益にはなりません。担当整形外科医と、幹細胞培養上清液を扱う医師の双方の意見を得るセカンドオピニオンも有用です。
Q. リハビリと注射は、どちらを優先すべきですか?
どちらか一方ではなく、両輪で進めることを推奨します。注射で炎症・疼痛を抑えつつ、可動域と肩甲胸郭リズムを維持する運動療法を並行することで、機能改善が得られやすくなります。
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【監修】森脇 進 / Shin Moriwaki(監修医師)
日本美容外科学会(JSAS)会員 / American Academy of Aesthetic Medicine 会員
ECFMG Certificate 取得
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