コラム

AGAの血液検査で本当に分かることと分からないこと──ホルモン・甲状腺・フェリチンを測る意味を整理する2026.06.29

「AGA血液検査をすれば、自分の薄毛の原因がはっきり分かるのではないか」──そう期待してクリニックを訪れる方は少なくありません。確かに血液は身体の状態を映す鏡であり、ホルモン値や栄養状態、甲状腺機能などを数値として可視化できる貴重な手段です。しかし、AGA(男性型脱毛症)の診療現場で日々患者さんと向き合っていると、血液検査で「分かること」と「分からないこと」を最初に整理しておかないと、結果に過剰に振り回されたり、逆に「異常なし」という一言で原因究明が止まってしまうケースがあると感じます。

薄毛の背景には、遺伝的素因・ホルモン感受性・全身状態・生活習慣・頭皮環境など、複数の要因が重なり合っています。血液検査はそのうちの一部の層を見ているにすぎません。本稿では、AGA血液検査で本当に何が読み取れるのか、そして読み取れないものに対して幹細胞培養上清液をはじめとした再生医療がどう関与できるのかを、臨床現場の視点から整理していきます。

AGA血液検査で「読み取れる」項目とその意味

AGAを疑って受診した患者さんに対して、医療機関で行う血液検査は単なるルーチンではありません。背景に薄毛を加速させる全身性の要因が隠れていないかをスクリーニングする目的があります。

男性ホルモン関連:テストステロン・遊離テストステロン

AGAの主要因の一つは、テストステロンが5αリダクターゼによって変換されたジヒドロテストステロン(DHT)が毛包に作用することです。そのため血液検査では総テストステロン・遊離テストステロンを測定することがあります。しかし重要なのは、血中ホルモン値が正常範囲内であってもAGAは進行するという事実です。なぜなら、薄毛の進行を決めるのは血中濃度そのものよりも、毛包側のアンドロゲン受容体感受性だからです。

甲状腺機能:TSH・FT3・FT4

甲状腺機能低下症・亢進症はいずれもびまん性脱毛を引き起こします。特に女性で「全体的に髪が薄くなった」「分け目が広がった」と訴える場合、AGAやFAGAだけでなく甲状腺由来の脱毛が背景にある可能性があり、これは血液検査で明確に拾える項目です。甲状腺ホルモンは毛周期そのものに直接影響するため、内服治療で機能が安定すれば抜け毛が劇的に改善するケースもあります。

鉄・フェリチン:隠れ鉄不足の発見

ヘモグロビン値が正常でも、貯蔵鉄であるフェリチンが低下している「隠れ鉄不足」は、特に月経のある女性で頻繁に見られます。フェリチン低下は休止期脱毛の引き金になりやすく、血液検査の中で最も介入意義の高い項目の一つです。フェリチン値が一桁台まで下がっている女性に対して鉄補給を行うだけで、数ヶ月後には抜け毛量が目に見えて減ることも少なくありません。

その他のスクリーニング項目

亜鉛・ビタミンD・肝機能・腎機能・血糖・脂質代謝なども、毛包の代謝環境に間接的に影響します。例えば亜鉛欠乏はケラチン合成を妨げ、ビタミンD不足は毛周期に関与することが示唆されています。脂質異常や糖尿病前段階は頭皮の微小血流に影響を与え、毛包への栄養供給を悪化させる可能性があります。

AGA blood test hormone ferritin thyroid

AGA血液検査で「読み取れない」もの──ここに再生医療の余白がある

ここからが本題です。多くの患者さんが誤解しているのは、「血液検査で異常がなければAGAは進まない」「血液が正常なら治療はいらない」という見立てです。実際には血液検査では拾えない領域が広く存在し、薄毛の進行は血液値とは独立して進むことも多々あります。

毛包側のアンドロゲン受容体感受性

前述の通り、血中DHT濃度が同じでも、毛包のアンドロゲン受容体の感受性が高い人は薄毛が進みやすく、低い人は進みにくい傾向があります。これは現状の保険診療レベルの血液検査では測定できません。AGA治療の指針については日本皮膚科学会のガイドラインでも、診断は問診と視診・トリコスコピーが中心と位置づけられています。

頭皮の微小炎症と毛包微小環境

毛包周囲の慢性的な微小炎症、皮脂分泌のバランス、頭皮マイクロバイオームの乱れ──これらはAGA進行の重要な背景因子ですが、採血では一切評価できません。むしろ視診とトリコスコピーで初めて拾える情報であり、血液検査だけに頼った診療では完全に見落とされる領域です。

毛包幹細胞のニッチ状態

毛球部に存在する毛包幹細胞が「働ける環境」にあるかどうかは、血液検査の数値では把握できません。加齢や慢性炎症、酸化ストレスによって毛包幹細胞のニッチが疲弊している場合、いくらホルモン値や栄養指標が良好でも発毛は鈍ります。ここに幹細胞培養上清液が関与する余地があります。

「異常なし」と言われた患者さんに、幹細胞培養上清液という選択肢

血液検査で目立った異常がなく、ホルモンも栄養も正常範囲。それでも薄毛は進む──こうした患者さんは決して珍しくありません。むしろAGA外来で最も多いパターンとも言えます。「採血では何も引っかからないのに、確実に分け目は広がっている」という訴えに対して、医療者側が「血液は正常ですから様子を見ましょう」と返してしまうと、患者さんは原因不明の不安を抱えたまま時間だけを失うことになります。

幹細胞培養上清液は、間葉系幹細胞を培養した際に上清中に放出される多数のサイトカイン・成長因子・エクソソームを含む液性因子群です。VEGF・IGF-1・HGF・KGFなどの成長因子は、毛包の微小血管新生、毛母細胞増殖、毛周期の成長期延長といったプロセスに関与することが報告されています。これらは血液検査の数値とは別の次元で毛包微小環境に作用するため、「血液は正常だが進行するAGA」に対して論理的に意味のあるアプローチとなります。

AVAN TOKYOでは、血液検査でスクリーニング可能な全身性要因をまず除外したうえで、それでも進行する薄毛に対して、Morpheus8によるマイクロニードルRFと幹細胞培養上清液のドラッグデリバリーを組み合わせる治療設計を行っています。血液値が正常であっても、毛包側の環境を底上げするアプローチは可能です。

AGA血液検査をどう位置づけるか──臨床現場からの提案

AGA血液検査は「原因を一発で言い当てる検査」ではなく、「除外すべき全身性要因をふるい分けるスクリーニング」と位置づけるのが正確です。甲状腺機能低下症や鉄欠乏など、見逃すと内服や生活指導で大きく改善する病態を拾うために行います。一方で、血液検査で異常がないからといって薄毛の進行が止まるわけではありません。

血液という「全身の鏡」と、トリコスコピーや視診という「頭皮の鏡」、そして幹細胞培養上清液という「毛包微小環境への介入」を組み合わせることで、はじめて薄毛診療は立体的になります。「採血して異常がなかったから何もしない」ではなく、「採血で除外できたからこそ、頭皮側のアプローチに集中できる」と捉えていただきたいのです。

薄毛のお悩みは一人で抱え込まず、ぜひ専門の医師にご相談ください。毛髪再生医療の関連コラム一覧はこちらから、より詳しい治療内容や症例についてもご確認いただけます。

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【監修】森脇 進 / Shin Moriwaki(監修医師)

日本美容外科学会(JSAS)会員 / American Academy of Aesthetic Medicine 会員

米国医師免許資格(ECFMG certificate)

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