ケロイド体質の方が脂肪吸引を受けるとき|吸引孔の傷跡と肥厚性瘢痕リスクを医師が解説2026.07.24
「脂肪吸引に興味はあるけれど、自分はケロイド体質だから傷跡が心配……」——このご相談は、実際のカウンセリングでも決して珍しくありません。ケロイド体質脂肪吸引を検討する際に最も重要なのは、吸引孔(ポート)と呼ばれる数mmの切開創が「通常の点状瘢痕」でとどまらず、赤く盛り上がった肥厚性瘢痕やケロイドへ進行する可能性を、あらかじめ理解したうえで手術設計を組み立てることです。本記事では、AVAN TOKYO銀座脂肪吸引クリニックの森脇医師が、ケロイド体質脂肪吸引の吸引孔リスクと、部位選択・切開デザイン・術後のスカーケアまでを医学的に解説します。
この記事の要点
・ケロイド体質脂肪吸引では、吸引孔の傷跡が肥厚性瘢痕やケロイドへ進行するリスクを事前に評価する必要がある
・ケロイドと肥厚性瘢痕は「範囲」と「経過」で明確に区別され、対応方針も異なる
・好発部位(前胸部・肩・恥骨部など)を避けて吸引孔を設計するだけで、傷跡リスクは大きく変わる
・シリコンジェルシート、テーピング、ステロイドの局所使用を組み合わせた「予防的スカーケア」が有効
・自己判断で放置せず、早期に美容外科医へ相談することが最終的な仕上がりを左右する
ケロイドと肥厚性瘢痕はどう違うのか
まず正しく区別しておきたいのが、ケロイドと肥厚性瘢痕の違いです。肥厚性瘢痕は、傷の範囲内に赤く盛り上がった瘢痕がとどまり、時間経過とともに徐々に平坦化していく傾向があります。一方でケロイドは、元の傷の範囲を越えて周囲の健常皮膚へ浸潤するように広がり、自然には落ち着かない、あるいは数年単位で増悪することもある特殊な瘢痕です。
発生メカニズムには、真皮のコラーゲン線維(Ⅰ型・Ⅲ型)の産生過剰と、局所の慢性炎症、機械的緊張の三つが関与すると考えられています。特に前胸部・肩・恥骨部・耳などの皮膚は張力がかかりやすく、ケロイドの好発部位として広く知られています。ケロイド体質脂肪吸引を計画するときには、この「皮膚の緊張をどう避けるか」という発想が非常に重要になります。

ケロイド体質脂肪吸引の吸引孔リスクとは
脂肪吸引の吸引孔は、通常3〜5mm程度の小さな切開です。多くの方では、時間の経過とともに白い点状瘢痕として目立ちにくくなります。しかし、ケロイド体質の方では、この小さな切開創ですら、赤く盛り上がった肥厚性瘢痕、あるいはケロイドへと進行することがあります。
特にリスクが高いのは、吸引孔が「皮膚の緊張が強い部位」に置かれた場合です。たとえば胸の谷間や胸骨前面、鎖骨下、肩の頂上、恥骨のすぐ上といった部位はケロイド好発部位と重なりやすく、吸引孔をここに設計することは可能な限り避けます。ケロイド体質脂肪吸引では「吸引したい部位」と「切開を入れて良い部位」が必ずしも一致しないため、経験ある美容外科医のデザイン力が仕上がりを大きく左右します。
吸引孔の位置と切開デザインをどう工夫するか
ケロイド体質脂肪吸引で吸引孔リスクを減らすには、次のような設計上の工夫が有効です。第一に、皮膚のたるみや自然なシワ(Langer線)に沿った位置に切開を置き、皮膚張力を最小化します。第二に、下着や水着で隠れる位置を優先し、露出時の心理的負担を軽減します。第三に、切開創の数を必要最小限にとどめ、細径カニューレを用いて創部への機械的刺激を減らします。
さらに、術中の縫合方法にも配慮が必要です。真皮縫合を過度に強く締めすぎないこと、抜糸のタイミングを早すぎず・遅すぎず判断すること、術後の圧迫固定で創部に持続的な牽引力がかかりすぎないよう調整することも、瘢痕形成リスクの低減に直結します。美容外科の安全基準や合併症の考え方については日本美容外科学会の情報も参考になります。
術後の予防的スカーケアの実際
ケロイド体質脂肪吸引の術後は、傷跡が落ち着くまで「予防的スカーケア」を継続することが推奨されます。基本となるのは、シリコンジェルシートまたはシリコンジェルの外用で、創部の湿潤環境と適度な圧迫を長期間保つことです。これによりコラーゲン過剰産生と炎症の遷延を抑える効果が期待できます。
さらに、状態に応じてステロイド含有テープの継続貼付、瘢痕内へのステロイド局所注射といった選択肢もあります。赤みや盛り上がりが既に出現している場合は、放置せず早めに医師に相談することが重要です。ケロイドは進行してから治療するよりも、初期の炎症段階で介入したほうが結果が良好な傾向があります。カウンセリング時には、帝王切開・虫垂炎・BCG接種痕など、過去の切開創がどの程度の瘢痕として残っているかを必ずお伝えいただくことが、安全な手術設計の第一歩になります。
より詳細な症例や部位別の解説は脂肪吸引の関連コラム一覧はこちらからご覧いただけます。
よくある質問
Q. ケロイド体質ですが、脂肪吸引は完全に禁忌ですか?
必ずしも禁忌ではありません。ケロイドの既往歴・好発部位・現在の瘢痕の状態を総合的に評価し、吸引孔の位置や術後スカーケアを綿密に設計することで、リスクを最小化しながら手術を行える場合もあります。ただし、既に大きなケロイドが複数ある方や、ケロイドの外科的治療歴がある方では、慎重にリスクとメリットを検討する必要があります。
Q. 吸引孔はどのくらいで目立たなくなりますか?
通常体質の方であれば、赤みは3〜6ヶ月で落ち着き、白い点状瘢痕として1年ほどかけて成熟していきます。ケロイド体質の方では、この経過が長引いたり、逆に赤みが増強したりすることがあるため、術後は定期的に医師の診察を受けて経過を確認することが重要です。
Q. どの部位なら比較的ケロイドになりにくいですか?
一般的に、上腕内側・大腿内側・臀部下縁・鼠径部など、皮膚張力が低く隠れやすい部位はケロイドが起こりにくいとされています。逆に前胸部・肩・恥骨部は好発部位のため、これらの近くを吸引する場合でも、切開はできるだけ好発部位を避けた位置に設計します。
Q. 家族にケロイドの人がいますが、影響しますか?
ケロイドには家族歴や遺伝的素因の関与が指摘されており、血縁者にケロイドの方がいる場合、ご自身も同じ体質を持つ可能性が上がります。カウンセリング時には家族歴もあわせて医師にお伝えください。
Q. 予防的スカーケアはいつまで続ければ良いですか?
一般的には術後3〜6ヶ月間、症状に応じてはそれ以上継続します。瘢痕の成熟には個人差があるため、担当医と相談しながら期間を調整することをおすすめします。
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【監修】森脇 進 / Shin Moriwaki(監修医師)
日本美容外科学会(JSAS)会員 / American Academy of Aesthetic Medicine 会員
米国医師免許資格(ECFMG certificate)
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