脂肪吸引で深部静脈血栓症(DVT)はどう防ぐ?広範囲手術の血栓リスクと予防策を医師が解説2026.07.23
広範囲の脂肪吸引を検討している方にとって、術後の腫れや内出血と同じくらい重要なのが「血栓症」のリスク管理です。特に一度に複数部位を吸引する広範囲手術では、深部静脈血栓症(DVT)や肺塞栓症といった致死的にもなり得る合併症を防ぐための脂肪吸引血栓予防の取り組みが、安全な手術の要となります。今回は AVAN TOKYO 銀座脂肪吸引クリニックの森脇医師が、脂肪吸引における血栓形成のメカニズム、術中・術後の予防策、そして見逃してはいけない初期症状について、医学的視点から詳しく解説します。

この記事の要点
・脂肪吸引血栓予防は、広範囲手術の安全性を左右する最重要対策である
・術中の血管損傷、同一体位の長時間保持、術後の脱水・浮腫の3要素が血栓リスクを高める
・弾性ストッキング、間欠的空気圧迫、早期離床、水分補給が基本の4本柱
・胸痛・呼吸困難・片脚だけの急な腫れは肺塞栓症・DVTを疑う重要サイン
・当院では術前リスク層別化と機械的予防を全例に導入し、安全性を最大化している
深部静脈血栓症(DVT)と肺塞栓症の関係
深部静脈血栓症(Deep Vein Thrombosis)とは、下肢や骨盤内の深部静脈に血の塊(血栓)が形成される病態です。この血栓が血流にのって右心系から肺動脈へ到達すると、肺塞栓症(Pulmonary Embolism)を引き起こし、突然の胸痛・呼吸困難・時に致死的な循環虚脱をもたらします。両者を合わせて「静脈血栓塞栓症(VTE)」と呼び、外科手術後の重要合併症として国際的に警戒されています。美容外科は「必要不可欠でない選択的手術」だからこそ、致死的合併症を限りなくゼロに近づけるための脂肪吸引血栓予防の設計が問われます。
Virchow’s triad で理解する血栓形成
血栓が形成される要素は、①血流停滞、②血管内皮損傷、③血液凝固能亢進の3つで、ウィルヒョウ(Virchow)の三徴と呼ばれます。脂肪吸引術ではこの3つが同時に成立しやすいため、機械的予防と行動指導の両輪が欠かせません。
脂肪吸引で血栓リスクが上がる医学的理由
第一に、カニューレ操作による皮下組織や微小血管の損傷が凝固カスケードを局所的に活性化させます。第二に、数時間にわたる同一体位(仰臥位・伏臥位)の保持が下腿深部静脈の血流を停滞させ、静脈うっ滞を招きます。第三に、術中のチュメセント液吸収や術後の第三腔への水分移動により、循環血漿量が一時的に減り、血液が濃縮しやすい状態になります。特に「広範囲吸引」「複数部位同時施術」「喫煙者」「経口避妊薬(エストロゲン含有ピル)使用者」「BMI 30以上」「過去のVTE歴」の方は、標準以上の脂肪吸引血栓予防プロトコルが必要です。
術中に行う脂肪吸引血栓予防の実際
術中対策の柱は「機械的予防」と「体位管理」です。当院では原則として下肢に間欠的空気圧迫装置(IPC)を装着し、ふくらはぎに周期的な加圧を加えることで静脈還流を積極的に維持します。加えて圧迫圧の調整された弾性ストッキングを全例に併用し、表在静脈系からの静脈うっ滞を予防します。長時間手術になる広範囲症例では、途中で軽度の体位変換を挟む、手術時間そのものが延びすぎないようデザインを合理化する、といった工夫も同じくらい重要です。麻酔管理側でも、術中の輸液バランスとバイタルモニタリングを密に行い、循環動態を安定させます。
術後に自分でできる脂肪吸引血栓予防セルフケア
術後にご自身で行える血栓予防の柱は次の4つです。①手術当日から可能な範囲で歩行し「早期離床」を心がける、②術後1週間程度は弾性ストッキング・圧迫着衣を継続する、③1日1.5〜2Lを目安に水分をこまめに補給する、④ベッドや椅子の上でも足関節の底背屈運動(足首の曲げ伸ばし)を1時間に1回、20回程度行う、という4点です。特別な機器を必要とせず、ご自宅でも確実に実行できる、非常にコストパフォーマンスの高い脂肪吸引血栓予防と言えます。長時間の座位や、飛行機・新幹線での長距離移動は、術後2〜3週間はできるだけ控えてください。
喫煙・ピル・持病がある方の追加リスク
喫煙は血管内皮を傷つけて血栓リスクを大幅に上げるため、術前1ヶ月・術後1ヶ月の禁煙を強くお願いしています。エストロゲン含有の低用量ピル・ホルモン補充療法を使用中の方は、担当医と相談のうえ休薬を検討します。糖尿病や脂質異常症などの生活習慣病がコントロール不良の場合も、事前に内科的評価を行うことが安全です。
肺塞栓症・DVTを疑うべき初期サイン
術後に次のような症状が現れた場合は、様子を見ずに当院あるいは救急医療機関に連絡してください。①突然の胸痛・息苦しさ・動悸・冷や汗、②片脚だけに現れる急な腫脹・熱感・強い痛み、③立ち上がった時にふくらはぎがつるように痛む(Homans徴候)、④意識が遠のく感じや失神、⑤SpO2の低下。特に「片側だけ」の下肢症状は診断的価値が高く、DVTを強く疑う所見です。早期発見・早期治療が予後を大きく左右するため、迷ったら我慢せず連絡してください。
AVAN TOKYOの脂肪吸引血栓予防への取り組み
当院では、術前に既往歴・服薬歴・BMI・喫煙状況・家族歴を詳細に問診し、Caprini スコアなどの国際的なリスク層別化ツールを参考に血栓リスクを評価します。中等度以上のリスクがある方には、必要に応じて術前 D-dimer 測定や下肢静脈エコーで潜在血栓の有無を確認します。手術当日は全例に弾性ストッキング+間欠的空気圧迫を組み合わせ、術後は当日離床、翌日以降のフォロー診察で下肢の状態を継続的に確認します。美容外科の安全基準については日本美容外科学会の情報も参照してください。脂肪吸引や豊胸に関連する他のテーマは脂肪吸引の関連コラム一覧はこちらからご覧いただけます。
よくある質問
Q. 脂肪吸引で血栓症になる確率はどれくらいですか?
報告により差がありますが、形成外科・美容外科手術後のVTE発症率は一般に0.03〜0.1%前後とされ、決して高頻度ではありません。ただし、広範囲吸引・複数部位同時・肥満・喫煙・経口避妊薬使用などのリスク要因が重なると発症率は上昇するため、リスク層別化と機械的予防の徹底が非常に重要です。
Q. 弾性ストッキングはいつまで着用しますか?
症例と部位によりますが、一般的には術後3〜7日を基本とし、下肢や広範囲吸引を伴う場合は1〜2週間の継続を推奨しています。当院では退院時に個別に指示いたします。強すぎる締め付けや皮膚障害が出た場合は我慢せずご連絡ください。
Q. ピルを飲んでいますが脂肪吸引は受けられますか?
エストロゲン含有ピルは血栓リスクを2〜4倍程度上げると報告されています。原則として術前4週間の休薬をお願いし、術後の再開時期も医師と相談していただきます。避妊目的で継続が必要な場合は、非エストロゲン系への一時変更を検討します。
Q. 術後にどんな症状が出たらすぐ受診すべきですか?
①突然の胸痛・呼吸困難・動悸、②片脚だけの急な腫れや痛み、③失神や意識の遠のき、④SpO2の急な低下、を認めた場合は、迷わず当院または救急医療機関にご連絡ください。「片側だけ」の下肢症状は特に診断的価値が高く、早期対応が予後を大きく左右します。
Q. 遠方から手術を受ける場合、いつ帰宅できますか?
長時間の座位(飛行機・新幹線)は下肢の血流停滞を招くため、広範囲吸引や豊胸を伴う症例では、手術当日〜翌日の長距離移動は避け、可能なら数泊の滞在をお願いしています。移動時は必ず弾性ストッキングを着用し、1〜2時間ごとに立って歩き、水分補給を欠かさないでください。
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【監修】森脇 進 / Shin Moriwaki(監修医師)
日本美容外科学会(JSAS)会員 / American Academy of Aesthetic Medicine 会員
米国医師免許資格(ECFMG certificate)
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