コラム

ドナー細胞で中身は変わる──年齢・採取部位・継代数が幹細胞培養上清液の組成に与える影響2026.06.28

「同じ“上清液”と表示されていれば、中身も同じだろう」──そう思っていませんか。実は幹細胞培養上清液の正体は、培養した幹細胞が分泌した分子のミックスであり、その組成は元になった細胞の素性によって大きく変化します。本コラムでは、ドナー細胞の年齢・採取部位・継代数という3つの軸が、上清液の中身にどのような影響を与えるのかを医学的に整理します。

幹細胞培養上清液は「細胞そのもの」ではなく「細胞が出した分子の集合体」

幹細胞培養上清液(CCM: Cell Culture Conditioned Media)とは、間葉系幹細胞を培養した際に培地中に分泌される成長因子・サイトカイン・エクソソーム・miRNA・ペプチドなどの分泌物を回収・濃縮した製剤です。細胞そのものを移植するのではなく、細胞が分泌したシグナル分子だけを使うため、安全性・取り扱いやすさの面で優位性があります。

しかし見落としやすいのが、「分泌される分子のプロファイルは、元の細胞次第で大きく変わる」という点です。

細胞が同じ“幹細胞”であっても、由来や培養条件が違えば、分泌される成長因子の種類・濃度・エクソソームの粒径・miRNAの組成はそれぞれ異なります。

だからこそ、上清液の品質を語るうえでドナー細胞の素性は無視できない要素となるのです。

stem cell conditioned media donor

ドナーの「年齢」が組成に与える影響

若いドナー由来の細胞は分泌活性が高い

間葉系幹細胞は、ドナーの年齢が上がるほど分泌能・増殖能ともに低下することが基礎研究で示されています。

若年ドナーから採取した間葉系幹細胞は、VEGF(血管新生因子)、HGF(肝細胞増殖因子)、IGF-1(インスリン様成長因子)などの主要な成長因子を高い濃度で分泌する傾向があります。

これらは毛包微小環境の血流改善や毛母細胞の活性化に関わるシグナルであり、若年ドナー由来の上清液は理論上、毛髪再生医療において有利と考えられます。

加齢に伴う「老化分泌物」の問題

一方で、高齢ドナー由来の細胞は、SASP(細胞老化随伴分泌現象)と呼ばれる炎症性サイトカイン(IL-6、IL-8、TNF-αなど)を多く放出することが知られています。

これらは慢性炎症を介して毛包幹細胞のニッチを乱す可能性があり、上清液の中に混在することは望ましくありません。

信頼できる製造元では、若年・健常ドナーを選定したうえで、SASP関連因子の含有を抑える品質管理を行っています。

「採取部位」によって幹細胞培養上清液は別物になる

脂肪・臍帯・骨髄・歯髄──部位ごとの個性

間葉系幹細胞は、脂肪組織・臍帯(へその緒)・骨髄・歯髄など、複数の組織から採取できます。

それぞれの組織から得られた幹細胞は、表面マーカーや分化傾向は似ていても、分泌するサイトカインのプロファイルは大きく異なります。

たとえば臍帯由来の幹細胞は若い細胞ゆえに増殖能が高く、IGF-1やHGFの分泌量が脂肪由来より多いと報告されています。

脂肪由来は採取が比較的容易でロット量を確保しやすい一方、ドナーの代謝状態の影響を受けやすい特性があります。

毛髪再生医療における部位選択の考え方

頭皮の毛包微小環境にアプローチする目的で本製剤を使う場合、血管新生・毛包幹細胞ニッチの再活性化・微小炎症の抑制という3点が重要です。

これらの作用に強く寄与する成長因子・エクソソームをバランスよく含むかという視点で、上清液の由来を検討する必要があります。

AGA治療の指針については日本皮膚科学会のガイドラインが基礎となりますが、再生医療領域の上清液は薬事承認医薬品ではないため、選定の判断は施術医のリテラシーに委ねられている現状があります。

「継代数」が幹細胞培養上清液の品質を左右する

継代を重ねるほど分泌能は落ちていく

培養した幹細胞は、培養容器が満杯になったところで植え替え(継代)を繰り返しながら増やしていきます。

ところが継代を重ねるほど、幹細胞は徐々に「老化」し、増殖能・分泌能が低下するヘイフリック限界に近づきます。

継代回数の少ない初期培養から回収した上清液は、成長因子・エクソソーム濃度ともに高い一方、継代後期の細胞から得た上清液は活性が落ちている可能性があります。

信頼できる製造元は、何代目(P3〜P5など)の細胞から回収したかをロットごとに記録・管理しています。

無血清培地・低酸素培養という別の変数

継代数と同じく、培地組成(ウシ胎児血清の有無)や酸素濃度(低酸素培養は分泌能を高めるとされる)も、上清液の組成に影響を与えます。

近年は、ウシ由来成分を含まない無血清培地で培養し、ヒトへの異種タンパク混入リスクを下げた上清液が標準化されつつあります。

こうした製造プロセスの透明性が、最終的な毛髪再生医療の効果・安全性の差として表面化してくるのです。

患者さんが上清液を選ぶときに見るべき項目

ここまで述べたとおり、幹細胞培養上清液は「同じカテゴリーの製剤でも中身が違う」のが実情です。

施術を検討する方が見るべきポイントは次の5つです。

・ドナーの年齢層と健常性が開示されているか

・採取部位(脂肪・臍帯・骨髄など)が明示されているか

・継代数(何代目の細胞から回収したか)がロット情報に含まれるか

・無血清培地・GMP準拠など製造管理基準が明確か

・含有成長因子・エクソソームの定量データが添付されているか

これらの情報が開示されていない製剤は、効果・安全性ともに評価のしようがありません。

AVAN TOKYOでは、上記の品質基準をクリアした上清液を採用し、Morpheus8によるドラッグデリバリーと組み合わせて毛髪再生医療を提供しています。

詳しい治療の考え方や他のテーマについては、毛髪再生医療の関連コラム一覧もあわせてご覧ください。

まとめ

幹細胞培養上清液は、ドナー細胞の年齢・採取部位・継代数によって組成が大きく変わるバイオ製剤です。

「上清液」という同じ名前で売られていても中身は均一ではなく、製造プロセスの設計が最終的な臨床効果に直結します。

治療を検討するときは、価格だけでなく「どの細胞から、どんな条件で作られた上清液か」という品質情報を確認することが、納得のいく結果に近づく第一歩です。

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【監修】森脇 進 / Shin Moriwaki(監修医師)

日本美容外科学会(JSAS)会員 / American Academy of Aesthetic Medicine 会員

米国医師免許資格(ECFMG certificate)

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