コラム

ノーウッド分類のどの段階で再生医療を足すべきか──II〜VIの進行度別に幹細胞培養上清液を組み込む治療設計2026.07.02

「AGA治療を始めたいが、自分は今どの段階なのかが分からない」「内服薬だけで十分か、それとも再生医療も足すべきか」──男性型脱毛症で診察に来られる方の多くが、この“治療の入口”で迷われます。

進行度を把握するうえで臨床現場が最も長く使ってきたのが、ノーウッド分類(Hamilton–Norwood classification)という7段階のスケールです。ノーウッド分類は生え際の後退と頭頂部の薄毛を組み合わせて進行度を読み取る指標で、内服・外用・幹細胞培養上清液を含む毛髪再生医療をどう組み立てるかを議論する共通言語になっています。

このコラムでは、ノーウッド分類の各段階で幹細胞培養上清液をどう位置づけるか、AVAN TOKYO 銀座での考え方を整理してお伝えします。

ノーウッド分類とは何を測っているのか

ノーウッド分類は1975年にO’Tar Norwoodが発表した男性型脱毛症の進行度スケールで、生え際の後退パターンと頭頂部の薄毛パターンを組み合わせてI〜VIIの段階に分けます。臨床では便宜的に「II、III、III vertex、IV、V、VI、VII」と表記し、進行度の共通言語として使われます。

数字が大きいほど「毛包の余力」は減っていく

ノーウッド分類が示しているのは、外から見た薄毛の広がりだけではありません。段階が上がるほど、頭皮の下では毛包のミニチュア化(毛が細く短くなる現象)が進み、休止期に入る毛包の割合も増えていきます。

つまりII〜IIIは「まだ十分な毛包が残っており、成長期を延ばせば挽回しやすい段階」であり、V〜VIは「毛包そのものが失われつつあり、残った毛包をいかに守るかが主戦場になる段階」だと理解しておくと、治療の優先順位が組み立てやすくなります。

M字先行型と頭頂先行型で「反応の出やすさ」が違う

ノーウッド分類は「生え際」と「頭頂部」を別軸で評価しますが、この2つは治療への反応が異なります。前頭部・生え際は5αリダクターゼII型の影響を強く受け、内服だけでは動きにくい領域です。一方、頭頂部は比較的反応が出やすく、内服・外用に幹細胞培養上清液を足すと変化を実感しやすい傾向があります。同じノーウッドIIIでも、M字先行型と頭頂先行型では治療設計が変わってくる、という視点が重要です。

male pattern baldness Norwood classification hair loss

進行度別に幹細胞培養上清液を組み込む考え方

ノーウッド分類を軸に、AVAN TOKYO 銀座では次のように段階別のプロトコルを考えます。断定的に「この段階だから必ずこうなる」ということではなく、あくまで治療設計の出発点としてお読みください。

Norwood II〜III:まず「進行を止める」に集中する段階

生え際がわずかに後退し始めたばかりのII〜IIIでは、まずフィナステリドやデュタステリドの内服で進行を止めることが最優先です。この段階では毛包の余力が残っており、頭皮環境を整えるだけでも密度が戻ってくる方が少なくありません。

幹細胞培養上清液は「必ず今すぐ足す」ものではなく、内服の反応を見ながら、頭皮環境の底上げや初期脱毛からの立ち上がりを助ける補助として組み込みます。20〜30代で進行が速いタイプの方は、早い段階から幹細胞培養上清液を併用する意味が出てきます。

Norwood IV〜V:内服だけでは物足りない中盤戦

頭頂部の薄毛が明確になり、生え際の後退と合流し始めるIV〜Vは、内服・外用の二本柱に幹細胞培養上清液を加える意味が最も出やすい段階です。この時期の毛包は「まだ生きているがミニチュア化が進んだ」状態で、成長因子・サイトカイン・エクソソームなど幹細胞培養上清液に含まれる多因子が、毛周期の成長期を後押しする土台になり得ると考えられています。

Morpheus8のようなRFニードリングとのドラッグデリバリー併用や、頭皮直接注入といった投与ルートの選択もこの段階でしっかり議論します。

Norwood VI以降:「守る治療」に切り替える段階

前頭部と頭頂部の薄毛が広くつながり、側頭・後頭部だけが残っているVI以降では、失われた毛包を「生やし直す」ことは幹細胞培養上清液でも困難です。

この段階では、残存する毛包をいかに守り、これ以上のミニチュア化を抑えるかが主眼になります。自毛植毛を検討する場合も、移植毛の生着と「元の毛」の維持を分けて考える必要があり、幹細胞培養上清液は植毛後の頭皮環境維持に位置づけられます。効果への過度な期待は避け、限界も含めてご説明します。

ノーウッド分類で治療の「順序」を組み立てる

ノーウッド分類の価値は、単に薄毛の程度を測ることではなく、治療の順序を組み立てる指針になる点にあります。同じ数字の段階でも、家族歴・進行スピード・年齢・毛質によって選ぶ手立ては変わります。

効果判定は「写真」と「毛径」で客観的に

進行度によらず、治療の効果判定は主観ではなく、標準化された定点写真と、可能であればトリコスコピーによる毛径・毛密度の測定で行うことが大切です。3〜6か月ごとにノーウッド分類の段階が動いていないか、細く弱い毛の割合が減っているかを確認し、変化が乏しい場合はプロトコルを見直します。

AGA・脱毛症の診療指針については日本皮膚科学会のガイドラインも参考になります。

他の毛髪再生コラムと合わせて読む

ノーウッド分類はあくまで進行度の「地図」であって、治療の内訳を決めるものではありません。内服・外用・幹細胞培養上清液・Morpheus8といった各アプローチの詳細については、毛髪再生医療の関連コラム一覧はこちらもあわせてご覧いただくと、自分の段階に合う治療の組み合わせを立体的に検討していただけます。

まとめ

ノーウッド分類は、男性型脱毛症の進行度を共通言語として測り、治療の順序を組み立てるための出発点です。II〜IIIでは「進行を止める」、IV〜Vでは「内服+幹細胞培養上清液で押し返す」、VI以降では「残った毛包を守る」──という段階別の主眼を理解することで、内服・外用・毛髪再生医療をどのように重ねていくかが見えてきます。

幹細胞培養上清液は万能薬ではなく、ノーウッド分類の段階と毛包の余力に応じて役割が変わる医療です。だからこそ、まずは自分が今どの段階にあり、何を守り、何を取り戻したいのかを、専門医と一緒に整理することから始めてみてください。

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【監修】森脇 進 / Shin Moriwaki(監修医師)

日本美容外科学会(JSAS)会員 / American Academy of Aesthetic Medicine 会員

米国医師免許資格(ECFMG certificate)

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