コラム

フケ・脂漏性皮膚炎と薄毛──マラセチア菌が引き起こす頭皮炎症と幹細胞培養上清液という選択2026.06.12

頭皮のかゆみ、繰り返すフケ、髪の生え際が後退してきた——これらの症状を別々の問題として捉えていませんか。実は、慢性的な頭皮炎症である脂漏性皮膚炎と薄毛は、深い部分でつながっています。マラセチア菌の過剰増殖と頭皮の炎症は、毛包幹細胞の機能を静かに損なっていくのです。本稿では、その医学的なつながりと、新しい選択肢として注目される幹細胞培養上清液の役割について解説します。

フケ・脂漏性皮膚炎が毛包に与える影響

脂漏性皮膚炎は、頭皮や顔のTゾーンなど皮脂分泌が活発な部位に生じる慢性炎症性皮膚疾患です。「ただのフケ」と軽視されがちですが、放置すれば毛包の健康そのものを損なう要因となります。

マラセチア菌と慢性炎症の悪循環

私たちの頭皮には、マラセチア(Malassezia)という常在真菌が存在します。皮脂を栄養源とするこの菌は、皮脂量が増えると過剰増殖し、皮脂中のトリグリセリドを遊離脂肪酸へ分解します。この遊離脂肪酸が頭皮を強く刺激し、赤み・かゆみ・フケといった症状を引き起こします。

慢性的に炎症が続くと、頭皮ではTNF-α、IL-1β、IL-6といった炎症性サイトカインが持続的に放出されます。これらの炎症因子は単に皮膚症状を悪化させるだけでなく、深部に存在する毛包幹細胞のニッチ環境(幹細胞が機能を保つための微小環境)を徐々に破壊していきます。

AGAや脱毛症の指針については日本皮膚科学会のガイドラインでも頭皮環境の重要性が示されていますが、臨床現場では脂漏性皮膚炎を併発した薄毛患者さんが想像以上に多く存在します。

炎症が毛周期を短縮させるメカニズム

健康な毛包は、成長期(アナゲン)→退行期(カタゲン)→休止期(テロゲン)というサイクルを2〜6年かけて繰り返します。ところが、慢性炎症下では成長期が短縮し、本来太く長く育つはずだった毛髪が、細く短いまま抜け落ちてしまいます。

これは「ミニチュア化」と呼ばれる現象で、AGAでも同様のメカニズムが進行します。脂漏性皮膚炎による炎症は、いわばAGAに上乗せされる「もう一つの脱毛要因」として作用するのです。実際に当院でも、フィナステリドやデュタステリドを長期間内服しているにもかかわらず効果が頭打ちになっていた患者さんで、頭皮の脂漏性炎症を本格的にコントロールした途端、毛量と毛径の改善が一気に進むケースを多く経験しています。「内服が効かない」のではなく、「炎症が内服の効果を打ち消していた」という構図は、臨床上きわめて重要なポイントです。

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幹細胞培養上清液という新しい選択

抗真菌シャンプーやステロイド外用は、表面的な炎症を抑える有効な手段です。しかし、すでに損なわれた毛包幹細胞のニッチ環境を「修復」する力までは持ちません。ここで注目されているのが、幹細胞培養上清液による頭皮再生アプローチです。

抗炎症作用と頭皮環境の正常化

幹細胞培養上清液には、IGF-1、HGF、KGF、VEGFといった成長因子に加え、TGF-βやIL-10といった抗炎症性サイトカインも豊富に含まれています。これらが頭皮に作用することで、過剰な炎症反応が鎮静化し、皮脂分泌バランスとマイクロバイオームの両面で健全な頭皮環境への回復が期待できます。

毛包幹細胞のニッチを整える

この上清液のもう一つの特徴は、毛包バルジ領域に存在する毛包幹細胞そのものへ働きかける点にあります。Wntシグナル経路の活性化、血管新生の促進、酸化ストレスの軽減——これらの作用によって、休眠状態にあった毛包が再び成長期へと移行するスイッチが入ります。

つまり「炎症を抑える」と「毛包を再生させる」という2方向から同時にアプローチできることが、薄毛と脂漏性皮膚炎を併発した患者さんにとって大きな意味を持つのです。

治療設計と臨床での注意点

単独治療には限界がある

ケトコナゾールなどの抗真菌シャンプーは、マラセチアの増殖をコントロールする上で重要です。しかし、シャンプーだけでは深部の毛包幹細胞にまで影響を与えることはできません。逆に、再生医療単独でも、表層の真菌バランスが乱れていれば効果は限定的になります。両者をどう組み合わせるかが、薄毛改善の成否を左右します。

AVAN TOKYOにおける統合的アプローチ

AVAN TOKYOでは、頭皮の炎症状態を視診とダーモスコピーで評価したうえで、抗真菌外用と幹細胞培養上清液のドラッグデリバリーを組み合わせた治療設計を行います。Morpheus8の微小なマイクロニードルを用いて、毛包幹細胞が存在する深さまで的確に届けることで、表層から深層までを一気にケアできます。

治療の頻度は、初期集中期に2〜4週間ごと、その後は2〜3か月ごとのメンテナンスが目安です。脂漏性皮膚炎の症状が落ち着いた後も、頭皮環境を整え続けることで、再発と薄毛進行の両方を予防していきます。

生活習慣による下支え

臨床的に効果を引き上げる要素として、生活習慣の見直しも欠かせません。皮脂の質と量はストレスや睡眠、糖質・脂質に偏った食生活と直結しており、これらが整わないままでは抗真菌外用や再生医療を行っても再燃を繰り返しやすくなります。とくに就寝前のスマートフォン使用や深夜の高脂質食、過度なアルコールは、頭皮の皮脂組成を悪化させ、マラセチアにとって増殖しやすい環境を作り出します。シャンプー選びも重要で、洗浄力が強すぎる商品はかえって皮脂の代償性分泌を招くため、低刺激かつ抗真菌成分を含むものを医師と相談しながら選択することが望ましいでしょう。

また、頭皮の血流を支えるという意味では、適度な有酸素運動や肩・首のストレッチも有効です。再生医療を「点」ではなく「面」で支える生活設計こそが、長期的な発毛維持の鍵になります。

まとめ

フケや脂漏性皮膚炎は、見た目の問題だけではなく、毛包幹細胞のニッチ環境を破壊し、薄毛を進行させる重大な要因です。表層の症状を抑える従来治療に加え、幹細胞培養上清液による深部からの再生アプローチを組み合わせることで、より根本的な改善が期待できます。

頭皮のかゆみやフケと薄毛の両方に悩んでいる方は、ぜひ一度、頭皮環境という視点から治療を見直してみてください。毛髪再生医療の関連コラム一覧はこちらからも、より深い情報をご覧いただけます。

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【監修】森脇 進 / Shin Moriwaki(監修医師)

日本美容外科学会(JSAS)会員 / American Academy of Aesthetic Medicine 会員

米国医師免許資格(ECFMG certificate)

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