コラム

仙腸関節の痛みはなぜ見逃されやすいのか──「腰が痛い」の一部を占める関節性疼痛と幹細胞培養上清液注射の位置づけ2026.07.04

「腰が痛い」と感じたとき、多くの方は椎間板や筋肉、あるいは坐骨神経を疑います。しかし実際の外来では、慢性腰痛の一部が仙腸関節に由来しているケースが少なくありません。この関節は骨盤の奥にあり、レントゲンやMRIでも異常が捉えにくいため、慢性化した腰痛の中で「原因不明」と扱われがちな部位です。この記事では、仙腸関節性の痛みがなぜ見逃されやすいのか、そして幹細胞培養上清液の関節注射という保存的アプローチがどの範囲を狙えるのかを、AVAN TOKYO 銀座 再生医療の森脇医師の視点から誠実に整理します。

仙腸関節とは何か──「ほぼ動かない関節」に見える小さな可動関節

骨盤の中央で体重を伝える”要”

仙腸関節は、背骨の一番下にある仙骨と、骨盤の腸骨をつないでいる関節です。左右に一対あり、上半身の体重を骨盤・下肢へ伝える要の役割を担っています。多数の強靱な靱帯で固定されているため、可動域はわずか数ミリ・数度と言われますが、この小さな動きが日常の歩行・立ち座り・姿勢保持を支えています。妊娠・出産・加齢・外傷・非対称な姿勢習慣などで、この関節の力学的バランスが崩れると、慢性的な鈍痛の発生源になりうるのです。

「ほとんど動かない」がゆえに意識されにくい

可動性が小さい関節は、いわゆる「関節痛」の対象として想起されにくい傾向があります。膝や肩のように動きの制限が目立たないため、患者さん自身も「関節が痛い」と表現しづらく、「腰の奥」「お尻の付け根」といった曖昧な訴え方になりがちです。ここが最初の落とし穴です。医療者側もまず椎間板や神経根を疑うことが多く、鑑別のリストで後回しになりやすい部位でもあります。

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なぜ仙腸関節の痛みは見逃されやすいのか

画像所見に頼れない痛みの発生源

腰痛の診療では、まず椎間板変性や脊柱管狭窄、椎間関節症などがX線・MRIでスクリーニングされます。しかしこの関節は形態的に大きな変化を起こさなくても痛みを出しうるため、画像所見と症状が一致しないケースが少なくありません。「MRIでは大きな異常はないと言われたが、痛みが数か月続いている」──こうした方の中に、関節性の痛みが紛れていることがあります。画像で見えないからこそ、身体所見の丁寧な積み上げが問診とセットで問われます。

誘発テストと圧痛点で見立てる

鑑別では、患者さんが「片側の腰やお尻の付け根」を指1〜2本で示せるかどうか(フォーティン指テスト)や、複数の疼痛誘発テスト(Gaenslen、Distraction、Compression、Thigh Thrust、Sacral Thrust など)を組み合わせて評価します。診断ブロック(関節内へ局所麻酔を注入し、疼痛が有意に軽減するかを確認する手技)が最終的な判断材料となる場面もあります。ここまでのステップを丁寧に踏んでこそ、この関節を”疑いの俎上”に乗せることができるのです。

幹細胞培養上清液の関節注射で狙えるレイヤー

抗炎症サイトカインという作用の考え方

幹細胞培養上清液は、間葉系幹細胞の培養過程で細胞外に分泌された各種成長因子・サイトカイン・エクソソームを含む液性成分の総称です。関節注射で期待される作用は、軟骨を”作り替える”ような強い再生というより、関節内の炎症サイクルに介入し、疼痛の温床となる滑膜や周囲軟部組織の環境を整えていく方向性です。仙腸関節では、狭い関節腔にとどまらず関節周囲の靱帯・付着部にも慢性的な機能不全が絡むため、上清液が関与しうるレイヤーは複数存在すると考えられます。

効果保証はできない・保存療法との併用が前提

一方で、仙腸関節性疼痛に対する幹細胞培養上清液のエビデンスは、症例報告・観察研究の段階が中心であり、比較試験に基づく確立された標準治療とは言えません。効果や持続期間には個人差があり、痛みがゼロになると断定することはできません。運動療法・骨盤ベルト・姿勢再教育など保存療法の土台があってこその選択肢と考えるのが誠実な位置づけです。

どんな人が候補になり、どんな人には向かないか

候補となりうる方

慢性の一側性の腰・臀部・鼠径部痛が数か月続き、椎間板や神経根に強い異常所見がなく、圧痛や誘発テストが陽性で、診断ブロックにも一定の反応が得られた方は、幹細胞培養上清液の関節注射を「保存療法の一つ」として検討する余地があります。この場合も、注射単独ではなく運動療法や体幹安定化トレーニングとの併用を前提に設計します。

先に精査が必要な方

発熱を伴う腰痛、体重減少、夜間痛の増悪、外傷後の急な痛み、下肢の脱力・膀胱直腸障害などの「赤旗徴候」がある場合は、感染性関節炎・骨折・悪性腫瘍・脊髄病変など緊急性のある病態を優先して除外する必要があります。関節注射で対処すべき局所の問題ではなく、まず整形外科での画像・血液検査による精査が最優先です。関節疾患に関する一般情報は日本整形外科学会の発信も参照してください。

慢性腰痛の背景として仙腸関節が関わっているかもしれないと感じた場合は、まずは正確な診断ステップを踏み、そのうえで幹細胞培養上清液の関節注射を含む保存的選択肢を検討する順序が大切です。幹細胞培養上清液の関節注射について詳しくはこちらもあわせてご参照ください。

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【監修】森脇 進 / Shin Moriwaki(監修医師)

日本美容外科学会(JSAS)会員 / American Academy of Aesthetic Medicine 会員

米国医師免許資格(ECFMG certificate)

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