変形性膝関節症のKL分類グレード別に幹細胞培養上清液の関節注射はどこまで期待できるか──適応と限界を整理する2026.07.04
膝の内側や前側に鈍い痛みがあり、階段を降りるとき・立ち上がるときに違和感が強くなる──こうした症状で外来を訪れる患者さんは非常に多いです。原因の多くは変形性膝関節症(膝OA)であり、その進行度を評価する国際的な尺度がKellgren-Lawrence分類(KL分類、グレード0〜IV)です。近年、保存療法の選択肢として幹細胞培養上清液の関節注射が注目されていますが、変形性膝関節症のKL分類グレード別に、この治療がどこまで期待できるのかについては、誠実な線引きが必要です。この記事ではAVAN TOKYO 銀座の森脇医師が、グレード別の適応と限界を整理します。
KL分類とは──変形性膝関節症の重症度を測るX線の基準
KL分類は1957年に提唱されて以来、変形性膝関節症の重症度評価における事実上の標準となっている尺度です。単純X線画像で以下の4つの所見を評価します。
・関節裂隙の狭小化(軟骨がすり減っている度合い)
・骨棘形成(骨のトゲ状の突起)
・軟骨下骨の硬化
・骨変形
これらを総合してGrade 0(正常)からGrade IV(高度の狭小化・変形)の5段階に分類します。関節疾患の情報については日本整形外科学会のガイドラインも参照ください。重要なのは、X線上のグレードと患者さんが感じる痛みの強さは必ずしも一致しないという点です。Grade IIでも激痛のある方がいれば、Grade IIIでも歩行にほとんど支障のない方もいます。したがって治療方針はグレードだけで機械的に決まるわけではありません。

グレード別に見る幹細胞培養上清液の関節注射の期待値
Grade I〜II:炎症コントロールと進行予防という考え方
軽度から中等度の変形性膝関節症では、関節裂隙の狭小化は軽く、軟骨自体もある程度残存しています。この段階で膝の痛みが出ている場合、主な要因は滑膜炎や関節液の増加といった「関節内の炎症環境」です。幹細胞培養上清液に含まれる各種サイトカイン・成長因子は、この炎症カスケードに働きかけると想定されており、疼痛軽減と関節内環境の改善が期待できるレンジです。ただし「軟骨を再生させる注射」と単純化することはできません。臨床的には、疼痛スコア(VAS/NRS)や日常動作の変化を数週から数か月単位で追いながら評価します。
Grade III:保存療法の「粘りどころ」としての位置づけ
Grade IIIでは関節裂隙の狭小化が明瞭になり、骨棘や軟骨下骨硬化も進みます。この段階の変形性膝関節症では、ヒアルロン酸注射だけでは効果が頭打ちになりやすく、患者さんの多くが「次の一手」を求めて来院されます。幹細胞培養上清液の関節注射は、ステロイド注射のような強力な即効性はありませんが、軟骨への負担を懸念せずに繰り返しやすいこと、関節内の炎症環境そのものに働きかけることが期待できる点で、この時期の保存的選択肢として一定の位置づけがあります。ただし可動域制限や内反変形が進んでいる場合は、注射単独ではなく運動療法・体重管理・装具との併用設計が不可欠です。詳細は幹細胞培養上清液の関節注射について詳しくはこちらをご確認ください。
Grade IV:手術適応の検討ラインと保存的選択肢の限界
Grade IVでは関節裂隙が高度に狭小化し、大きな骨棘や骨変形を伴います。日常生活に強い支障が出ているケースでは、人工膝関節置換術(TKA)の適応を整形外科的に検討すべきステージです。この段階で幹細胞培養上清液の関節注射に「軟骨を戻す」ような効果を期待するのは現実的ではありません。ただし、全身状態や年齢、患者さんの意向により手術を選ばない・急がないという判断を取る場合、痛みを緩和しながら生活の質を保つための保存的手段として、他の治療と組み合わせて検討される場面はあります。この段階では「治す」よりも「共存する」という視点が中心になります。
グレードだけで判断しないために──MRI・症状・生活背景も含めた評価
X線でのKL分類は簡便で標準化されていますが、変形性膝関節症の実像を捉えるには、これに加えてMRIによる軟骨・半月板・骨髄浮腫(Bone Marrow Lesion)の評価、身体所見、生活背景を統合して考える必要があります。半月板損傷が痛みの主因である場合や、鵞足炎など関節外の要因が絡んでいる場合には、関節注射の適応判断そのものが変わってきます。同じKL分類グレードでも、活動性・体重・アライメント・仕事や趣味の負荷のかかり方によって、選ぶべき治療の重心はまったく違うのです。
まとめ──「グレード別に何を期待するか」を初診で共有する
変形性膝関節症のKL分類グレード別に幹細胞培養上清液の関節注射で期待できることは、Grade I〜IIでは炎症コントロールと進行予防、Grade IIIでは保存療法の「粘りどころ」、Grade IVでは手術適応の検討と併走する緩和的位置づけ──と段階的に整理できます。「軟骨を再生させる」という単純な期待ではなく、それぞれのグレードで注射に何を担わせ、何を担わせないかを初診で共有することが、治療満足度を大きく左右します。効果には個人差があり、リハビリテーション・生活習慣・体重管理と組み合わせた包括的な設計が前提となります。膝の痛みでお悩みの方は、まずX線・MRIによる正確な診断のうえで、ご自身の膝の状態に応じた治療プランをご相談ください。
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【監修】森脇 進 / Shin Moriwaki(監修医師)
日本美容外科学会(JSAS)会員 / American Academy of Aesthetic Medicine 会員
米国医師免許資格(ECFMG certificate)
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