脂肪豊胸の多部位採取|太もも・臀部・ふくらはぎから集める設計を医師が解説2026.10.12
脂肪豊胸多部位採取は、太もも・臀部・ふくらはぎといった下半身の複数の採取部位から少量ずつ脂肪を集めて、ご自身の脂肪で必要な注入量を確保するためのドナー戦略です。細身の方や、1部位だけでは十分な脂肪量が採取できない場合に重要になります。本記事では、20代女性のCRF(コンデンスリッチ脂肪注入)豊胸の一例をもとに、採取部位の選び方、吸引量と注入量が同じではない理由、左右差への対応、注入層の使い分け、リスクまでを監修医の視点から解説します。
この記事の要点
・脂肪豊胸多部位採取は、1部位の皮下脂肪が薄い細身の方でも、採取側の輪郭を保ちつつ必要な注入量を確保するためのドナー戦略です。
・採取量と注入量は同じではなく、濃縮工程で半分以下になるため、「どのくらい入れたいか」から逆算して採取部位と量を決めます。
・採取部位ごとに脂肪の線維量や性質は異なり、太もも全周・臀部・ふくらはぎ〜足首ではそれぞれ採取戦略が変わります。
・左右差のある胸では、左右で注入量と注入層を変えて仕上がりのバランスを整えます。
・多部位採取は切開数が増えるため、吸引孔の位置設計と術後の圧迫着管理が仕上がりに影響します。

なぜ複数の部位から脂肪を採るのか
ご自身の脂肪を使う脂肪豊胸では、1部位から安全に採取できる脂肪量に上限があります。1か所から大量に吸引すると、採取部位の表面に凹みや段差、左右差が出やすくなり、仕上がりの不自然さにつながります。
必要な注入量が多い場合や、1部位の皮下脂肪が薄い細身の方では、太もも全周・臀部・ふくらはぎ〜足首など複数の部位から少量ずつ分散して採取する考え方をとります。1部位あたりの吸引量を抑えることで、採取側のラインの滑らかさを保ちやすくなります。
今回の20代女性の一例では、合計約1,600mlの脂肪を下半身の3部位に分散して吸引しました。胸のボリュームアップと、下半身のラインを整えることを同時に目指すデザインです。

脂肪豊胸多部位採取で選ぶ3つのドナー部位の特徴
採取部位ごとに、皮下脂肪の層構造や線維量、採取のしやすさは異なります。それぞれの特徴を踏まえて吸引層と吸引量を決めます。
太もも全周
太もも全周は、脂肪豊胸のドナー部位として採用されやすい部位です。外側・内側・前面・裏面と層が広く、まとまった量が採取できます。浅層〜中層の脂肪は注入用脂肪として扱いやすい一方、深層は線維が多いことがあり、濃縮工程での歩留まりに影響します。
臀部(お尻)
臀部の皮下脂肪は厚みがあり、臀部下縁から少量を分散して採ることで、臀部の下側のラインを引き締める効果も期待できます。採りすぎると臀部の下垂や形の崩れの原因になるため、採取量と位置を慎重に決めます。
ふくらはぎ〜足首
ふくらはぎから足首にかけての脂肪量は多くありませんが、下半身のラインを足元まで繋げたい場合に意味のある採取部位です。腓腹筋・ヒラメ筋の形を損なわないよう、吸引層と吸引量を特に慎重に設計します。

吸引量と注入量は同じではない|濃縮工程で量が減る理由
よく誤解されやすいのが、吸引した脂肪量がそのまま胸に注入されるわけではないという点です。採取した脂肪には麻酔液・血液・損傷した脂肪細胞・遊離脂質などが混在しているため、注入前にこれらを取り除く工程が必要です。
今回の症例では、下半身3部位から合計約1,600mlを採取し、そこから純度の高い脂肪約500mlを分離、低速遠心による濃縮工程を経て、最終的に350mlの注入脂肪を調製しました。採取量に対して注入可能量は半分以下になるため、「どのくらい入れたいか」から逆算して採取部位と採取量を決める必要があります。
濃縮工程では、回転数と時間を強くしすぎると脂肪細胞そのものがダメージを受け、不十分だと油分や水分が多く残り、注入後の油性嚢胞やしこりの原因になり得ます。

左右差への対応|注入量を左右で変える
多くの方の胸は、術前から左右で大きさや形にわずかな差があります。用意した注入脂肪を左右均等に半分ずつ入れると、もともとの左右差がそのまま、あるいは強調されて残ることがあります。
今回の症例では、濃縮して得た脂肪350mlを右胸210ml・左胸140mlと左右で量を分けて注入しました。術前のバストの大きさ・胸郭の張り方・乳頭位置を立位でマーキングし、左右で必要量を決めています。
注入時は層を分けて少量ずつ扇状に分散します。一か所に厚くまとめて注入すると、脂肪塊の中心部まで血流が届かず、しこり・石灰化・脂肪壊死の原因になることがあるためです。

皮下と大胸筋内の使い分け
注入脂肪をどの層に入れるかは、乳腺の厚みと胸郭の形で決めます。今回は両胸ともに主に皮下へ注入し、右胸のみ一部を大胸筋内にも注入しました。
皮下注入は、デコルテから胸の上部にかけての丸みをつくりやすく、仕上がりの自然さを出しやすい層です。一方で、皮下に厚く入れすぎると表層に脂肪塊が集まり、触診でしこりとして感じやすくなる場合があります。
大胸筋内への注入は、血流の豊富な筋肉層に少量ずつ分散することで生着環境を確保しやすいとされます。手技の難易度が高いため、カニューレの位置と層のコントロールに注意します。乳腺内への注入は、将来の乳がん検診への影響を避けるため、当院の脂肪豊胸では行いません。

この症例の治療内容・費用・リスク
治療内容:20代女性に対して行ったコンデンスリッチ脂肪注入豊胸(CRF豊胸)の一例です。全身麻酔下で、太もも全周・臀部・ふくらはぎ〜足首にチュメセント麻酔液を注入し、合計約1,600mlの脂肪を採取。純脂肪約500mlを分離し、低速遠心で濃縮して350mlの注入脂肪を調製しました。右胸210ml(皮下170ml・大胸筋内40ml)、左胸140ml(皮下140ml)に、左右差を補正しながら注入しています。
費用:脂肪豊胸・脂肪吸引の費用は、採取部位・採取量・麻酔・圧迫着・採血などの付帯費用を含めて個別の見積もりになります。詳しくは料金ページをご確認ください。
主なリスク・副作用:内出血・腫れ・疼痛・一時的なしびれ、採取部位の凹凸・段差、左右差、注入脂肪の生着不全、しこり・石灰化・油性嚢胞、創部の瘢痕、感染、ごく稀に脂肪塞栓症候群・深部静脈血栓症などが報告されています。
効果の現れ方・生着の程度・ダウンタイムの経過には個人差があり、写真はあくまで一例です。最終的な大きさや形は、カウンセリングで体型・胸郭・ピンチテスト・乳腺エコーなどをもとに個別に相談のうえ決定します。

術後6ヶ月の経過
術後6ヶ月は、注入脂肪の初期の吸収が落ち着き、生着した脂肪が周囲組織と馴染んでくる時期にあたります。術直後は腫れ・むくみを含んだボリュームが見られますが、術後1〜3ヶ月で吸収が進み、3〜6ヶ月で最終的な形へと近づきます。
今回の症例でも、デコルテから胸の上部にかけてのふくらみ、横から下にかけての丸みが残り、正面から見たときの胸の輪郭が術前よりはっきりしています。下半身のドナー部位も、腫れ・内出血は落ち着いています。

生着を左右する術後3ヶ月の過ごし方
注入した脂肪は術直後に全てが残るわけではなく、周囲組織からの血流再構築を経て徐々に生着していきます。この生着プロセスの大部分が決まる術後3ヶ月は特に重要な期間です。
この時期は、胸を強く圧迫するスポーツブラ・ワイヤーの着用、うつ伏せ寝、過度なマッサージを避けます。採取部位は圧迫着で均一に圧をかけ、死腔を減らすことで浮腫・漏出液・凹凸のリスクを下げることを目指します。喫煙・極端なダイエットは末梢循環を低下させ、生着率を下げる要因となるため、術前術後ともに控えます。

多部位採取のリスクと注意点
脂肪豊胸多部位採取では、採取部位の数だけ吸引用の小さな切開が増えます。今回も両鼠径部・両腋窩前・乳頭下・臀部下・膝裏など目立ちにくい位置を選んで切開を設けていますが、瘢痕の仕上がりには体質差があります。
採取範囲が広くなるため、全身麻酔管理・術前採血などの術前評価の重要性が増します。術前の採血で貧血・凝固・肝腎機能などを確認し、安全に広範囲手術を行える全身状態かを評価します。美容外科の安全基準については日本美容外科学会の情報も参照いただけます。関連する脂肪吸引・脂肪豊胸の情報は脂肪吸引の関連コラム一覧でご覧ください。

よくある質問
Q. なぜ太ももだけで足りない人がいるのですか?
胸に必要な注入量に対して、1部位から安全に採れる量には上限があるためです。細身の方や皮下脂肪が薄い方では、太もも1部位では十分な脂肪量が確保できないことがあり、そうした場合に脂肪豊胸多部位採取を検討します。
Q. 多部位から脂肪を採ると、傷も増えますか?
はい、採取部位の数だけ吸引用の小さな切開が増えます。鼠径部・腋窩・膝裏など目立ちにくい位置を選びますが、瘢痕の仕上がりには体質差があります。
Q. 1,600ml吸引して注入が350mlなのはなぜですか?
採取脂肪には麻酔液・血液・損傷した脂肪細胞などが含まれるため、濃縮工程で不要な成分を取り除いて注入可能な脂肪のみを使用します。採取量に対して注入可能量は半分以下になることが一般的です。
Q. 左右差のある胸でも脂肪豊胸で整えられますか?
術前の左右差の程度と胸郭形状を評価したうえで、左右の注入量と注入層を変えて調整することが可能です。ただし、完全な左右対称を保証するものではなく、個人差があります。
Q. 下半身の採取部位は、ダイエットのように凹みますか?
1か所から過剰に採ると凹みや段差のリスクが上がるため、分散して少量ずつ採る設計をとります。層・方向・採取量を慎重に設計することで、採取側のラインも自然に整えることを目指します。
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料金・症例写真・よくある質問は 太ももの脂肪吸引の施術ページ/脂肪豊胸の施術ページ をご覧ください。
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【監修】森脇 進 / Shin Moriwaki(監修医師)
日本美容外科学会(JSAS)会員 / American Academy of Aesthetic Medicine 会員
ECFMG Certificate 取得
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