コラム

「最近抜け毛が増えた」と感じたら最初に何を診るべきか|薄毛初診の診断手順2026.08.04

「最近抜け毛が増えた気がする」と気づいた段階で、いきなり「じゃあ育毛剤を使ってみよう」「発毛薬を試そう」「幹細胞培養上清液を打ってみよう」と治療から入るのは、実は遠回りになりやすい選び方です。薄毛初診の診断手順は、治療の前に「今の脱毛はどの型で、どのスピードで、どこまで進んでいるのか」を切り分けるための、順序立てられた地図を作るところから始まります。ここを飛ばすと、たとえ有効な治療を組んでも土台が抜けたり、そもそも適応外の脱毛に強い治療を上乗せしてしまうリスクが残ります。

この記事の要点

・薄毛初診の診断手順は「問診→視診・触診→家族歴→進行スピード→必要に応じた検査」という決まった順序で組み立てる

・治療の前に AGA/FAGA・休止期脱毛・瘢痕性脱毛・全身疾患由来の脱毛を切り分けることが最優先

・家族歴と発症年齢の組み合わせは、進行の速さと将来像を予測する重要な材料

・「いつから」「どう変わってきたか」を時系列で言語化できるほど治療設計の精度が上がる

・幹細胞培養上清液や内服の話は診断が固まってからでよく、順序を飛ばすほど無駄が増える

薄毛初診の診断手順の第一歩は問診──最初に聞くべき5つの軸

問診はただの世間話ではなく、その後の視診・触診・血液検査・治療設計の全てを規定する土台です。薄毛初診の診断手順の中で最も情報量が多いのは、実は初対面の10〜15分の問診時間だと考えています。

いつから気になり始めたか(発症時期)

「1年前くらい」「産後半年後から」「単身赴任で環境が変わったあたりから」など、発症のきっかけを時系列で拾います。急性の変化と慢性・じわじわの変化では、疑うべき病態がまったく違います。急に増えた抜け毛は休止期脱毛・薬剤性・甲状腺機能異常・鉄欠乏を、緩やかな進行はAGA/FAGAをまず疑うのが原則です。

どう変わってきたか(進行のパターン)

「生え際が後退している」「分け目が広がった」「シャンプー時の抜け毛が全体的に増えた」など、変化の起こり方は脱毛の型を映します。局所的な後退はAGA/FAGAを、頭全体の抜け毛は休止期脱毛や全身要因を示唆します。

家族歴

父方・母方の両系統について、薄毛の有無だけでなく「何歳頃から」「どこまで進んだか」まで聞くことが、進行スピードの現実的な見立てにつながります。

既往歴・服薬歴

甲状腺疾患・貧血・膠原病・皮膚疾患、抗凝固薬・ステロイド・抗癌剤・ホルモン剤など、脱毛に絡む可能性のある病歴と薬剤を洗い出します。

生活イベント

妊娠・出産・大きな体重変動・過度なダイエット・強い精神的ストレス・大きな手術は、休止期脱毛の典型的な引き金になります。

hair loss first visit medical consultation trichoscopy

視診・触診・トリコスコピーで何を見ているのか

問診で立てた仮説を、目と手と拡大観察で答え合わせしていく段階です。頭皮全体を「前頭部・頭頂部・側頭部・後頭部」に分け、毛の太さのばらつき、1毛穴あたりの本数、頭皮の色調、鱗屑・紅斑・膿疱の有無、瘢痕の有無を確認します。毛包開口部が消失している瘢痕性の所見があれば、いくら生活習慣を整えても幹細胞培養上清液を打っても毛は戻りません。ここを最初に排除しておくことが、後の期待値のずれを防ぎます。トリコスコピーでは、AGA/FAGAで見られる毛径のばらつき(アンイソトリコシス)や1毛穴あたりの本数減少、円形脱毛症の感嘆符毛、扁平苔癬性脱毛のパープル色調など、肉眼では拾いきれないサインを可視化します。

進行スピードをどう推定するか

薄毛は「今」の写真1枚では読み切れません。過去1年・3年・5年の写真、免許証や学生証、SNSに残った写真などを一緒に見返しながら、後退量を時間で割って「1年あたりどの程度進んでいるか」を推定します。同じNorwood IIIでも、10年かけてゆっくり進んだ人と、2年で駆け抜けた人では治療の急ぎ方が全く違います。急速進行型ほど「まず止める」に強い治療を組む必要があり、幹細胞培養上清液の位置づけも変わります。

血液検査は誰に必要か

男性でも女性でも、進行が速い・びまん性・産後・過度なダイエット後・慢性疲労がある場合は、フェリチン・TSH・FT3・FT4・ビタミンB12・葉酸・亜鉛などの追加検査を検討します。「AGAだから血液検査は不要」というのは古い認識で、貯蔵鉄不足や潜在性甲状腺機能低下が併存していると、どれほど強い治療を組んでも土台から毛が抜けていきます。逆に、緩徐進行のNorwood IIIで家族歴も明らかな中年男性であれば、最初から包括的な採血を必須にする必要はなく、経過を見て追加する運用が現実的です。

診断が固まってから治療設計に入る

ここまでの薄毛初診の診断手順を踏むと、ようやく「AGA/FAGAが主で休止期脱毛の要素も混じっている」「瘢痕性脱毛症の疑いがあり皮膚科的評価を先に」「明らかな鉄欠乏があるので内科と並走」といった具体的な組み立てが可能になります。幹細胞培養上清液の毛髪治療は、毛包が残存していて微小炎症とミニチュア化が主な問題である病態には意義がありますが、瘢痕性脱毛症で毛包そのものが失われている頭皮には効きません。順序を守る診断が、そのまま治療の空振りを減らします。

同じ薄毛でも診断根拠が変われば治療設計は変わります。関連コラムは毛髪再生医療の関連コラム一覧はこちらからご覧いただけます。AGAや円形脱毛症の診療指針については日本皮膚科学会のガイドラインもあわせて参照してください。

よくある質問

Q. 抜け毛が増えた気がしますが、まだ量は多くありません。今すぐ受診すべきですか?

「気になった」タイミングが最も情報を残せる受診時期です。過去写真との比較ができる状態のうちに、進行スピードを含めた薄毛初診の診断手順を組み立てておくと、治療が必要になった際の判断が早まります。すぐに治療を始めるかどうかは、診断結果を踏まえて医師と相談しながら決めれば十分です。

Q. 初診の日はどのような準備をしていくと良いですか?

過去1〜5年の顔写真、服用中の薬とサプリのリスト、家族の薄毛の有無と年齢、直近半年の体調変化(出産・急激な減量・強いストレス・大きな手術など)をメモしていただけると、限られた診察時間で診断が深く進みます。

Q. AGAだと言われたら幹細胞培養上清液を必ず併用すべきですか?

必須ではありません。診断で見えてきた進行度・年齢・毛包の余力・希望するゴールによって、内服・外用・再生医療の組み立て方は変わります。「全部やる」ではなく「必要な順に足していく」設計が現実的です。

Q. 血液検査は毎回必要ですか?

初診で1度確認し、鉄・甲状腺・栄養に大きな異常があれば内科的介入を先行させ、治療開始後は経過に応じて再検します。異常がなければ毎回の測定は不要です。

Q. 瘢痕性脱毛症の疑いがあると言われた場合はどうなりますか?

毛包そのものが失われている領域には幹細胞培養上清液は効きません。まず皮膚科と連携して炎症のコントロールと診断確定を優先し、失われていない領域を「守る」治療に軸足を移します。

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【監修】森脇 進 / Shin Moriwaki(監修医師)

日本美容外科学会(JSAS)会員 / American Academy of Aesthetic Medicine 会員

ECFMG Certificate 取得

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