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Columnコラム

アトピー性皮膚炎の方の脂肪吸引はできる?皮膚バリア機能と創傷治癒リスクを森脇医師が解説2026.08.05

アトピー性皮膚炎をお持ちの方から「脂肪吸引を受けたいけれど、私の肌でも大丈夫でしょうか」というご相談は非常に多くいただきます。結論から申し上げると、アトピー脂肪吸引は皮膚コンディションを整えたうえで、感染・創傷治癒・傷跡リスクを個別に評価すれば十分に安全に施術可能です。ただし健常肌の方と比べて注意点があり、術前準備・術後ケアの両面で工夫が必要になります。本コラムでは、皮膚バリア機能・黄色ブドウ球菌・創傷治癒という3つの医学的視点から、AVAN TOKYOでの実際の対応を含めて森脇医師が解説します。

この記事の要点

・アトピー脂肪吸引は皮膚コンディションが安定していれば十分に施術可能である

・アトピー患者の皮膚は黄色ブドウ球菌が高頻度で常在し、術後感染リスクが健常肌より高いという報告がある

・術前2〜4週間の外用療法と保湿で皮膚バリアを整えることが最重要な準備となる

・ステロイド外用の中止タイミングは症状再燃を避けるため個別判断が必要である

・肥厚性瘢痕になりやすい傾向があり、吸引孔の位置設計と術後の遮光・保湿管理が鍵となる

アトピー脂肪吸引で最初に考えるべき「皮膚バリア機能」

アトピー性皮膚炎の本質は、単なる肌荒れではなく「皮膚バリア機能の破綻」にあります。表皮最外層の角質層では、フィラグリンというタンパク質やセラミド・遊離脂肪酸などの細胞間脂質が「レンガとモルタル」のように働き、水分蒸散と外来異物の侵入を防いでいます。アトピー患者ではフィラグリン遺伝子変異やセラミド合成低下により、この「モルタル」が薄く、経表皮水分喪失(TEWL)が健常肌の2〜5倍に達することが知られています。

皮膚バリア障害が脂肪吸引に与える3つの影響

1つ目は消毒液・局所麻酔テープの刺激です。クロルヘキシジンやポビドンヨードといった術野消毒剤は健常肌でも刺激感がありますが、バリア破綻肌ではしみる感覚が強く、接触皮膚炎を起こしやすくなります。

2つ目は術後の弾性着衣・テープによるかぶれです。脂肪吸引後は圧迫固定を数週間継続する必要がありますが、化学繊維の摩擦や汗のこもりでアトピーが増悪しやすいため、素材選択と装着方法に工夫が必要です。

3つ目は創部の乾燥と治癒遅延です。TEWLが高いと湿潤環境を保ちにくく、上皮化のスピードに影響します。当院では術後保湿を通常肌より頻回に行うようご案内しています。

アトピー脂肪吸引で最も重要な「黄色ブドウ球菌」対策

健常人の皮膚に黄色ブドウ球菌(Staphylococcus aureus)が常在する率は5〜30%程度ですが、アトピー性皮膚炎患者では病変部の80〜90%、健常部位でも高頻度に定着していることが皮膚科領域の複数研究で報告されています。黄色ブドウ球菌は脂肪吸引の術後感染で最も高頻度に検出される起因菌の一つであり、この定着率の差は臨床的に無視できません。

AVAN TOKYOではアトピー患者様の脂肪吸引に際して、術前の皮膚コンディション評価、術野の丁寧な洗浄、必要に応じた術前抗菌薬内服の期間延長を含む個別プロトコルを組み立てています。ただし過剰な抗生物質の予防投与は耐性菌を増やす懸念があるため、あくまで「症例に応じた設計」が原則です。

アトピー 皮膚 バリア

術前2〜4週間で行うべき皮膚コンディション調整

この施術で最も差がつくのは、実は手術そのものよりも術前の肌づくりです。皮膚バリアが整ったタイミングで施術に入るほど、感染リスクが下がり傷跡もきれいに落ち着きます。

推奨される具体的なステップは以下です。

・かかりつけ皮膚科での外用療法(ステロイド外用薬・タクロリムス軟膏・デルゴシチニブなど)を継続し、症状の再燃を先にコントロールする

・保湿剤(ヘパリン類似物質・ワセリン・セラミド配合クリームなど)を1日2〜3回塗布し、TEWLを可能な限り下げる

・入浴時のナイロンタオル・熱すぎるお湯は避け、皮膚の物理的刺激を減らす

・鉄・亜鉛・ビタミンA/C/Dなど創傷治癒に関わる栄養素の充足を意識する

ステロイド外用薬は「術直前まで塗って良いか」がよく質問されますが、吸引孔から離れた部位への通常量の使用であれば創傷治癒に大きな影響はしません。手術部位そのものへの塗布に関しては、症状の再燃リスクと局所免疫抑制のバランスを見て個別に判断します。

アトピー患者の傷跡・肥厚性瘢痕リスク

アトピー性皮膚炎はTh2優位の免疫応答が特徴で、創傷治癒過程でも通常と異なるサイトカインバランスとなることが知られています。これにより肥厚性瘢痕(傷跡が赤く盛り上がるタイプ)のリスクが健常肌より高くなる傾向があります。真のケロイド体質とは病態が異なりますが、術後の傷跡管理は健常肌以上に重要です。

吸引孔の設計で意識するポイント

脂肪吸引の吸引孔は通常3〜5mm程度と小さいですが、アトピー患者ではさらに「隠れる位置」「張力のかからない位置」「最小限の本数」という3点を強く意識してデザインします。二の腕であれば腋窩の皮膚シワ内、腹部であれば下着ラインの内側、といった具合に、術後日常生活の摩擦・張力を避けられる場所を選びます。

術後3ヶ月間は紫外線対策シリコンジェルシートまたはテーピングによる瘢痕ケアを継続していただきます。炎症後色素沈着(PIH)はアトピー患者でより濃く残りやすいため、UV対策は通常患者より徹底が必要です。

ステロイド外用・生物学的製剤・JAK阻害薬服用中の判断

近年アトピー治療は選択肢が急速に広がり、外用薬に加えデュピルマブ(デュピクセント®)などの生物学的製剤、バリシチニブ・ウパダシチニブなどのJAK阻害薬まで使われるようになりました。これらの薬剤ごとに脂肪吸引前の対応が異なります。

外用ステロイド・タクロリムス:手術部位外への通常量継続は問題なし

デュピルマブ:免疫抑制作用は限定的で、原則継続可能。ただし主治医と相談

JAK阻害薬:感染リスクと血栓リスクを高める可能性があるため休薬期間の検討が必要

全身ステロイド長期使用:創傷治癒遅延・感染リスク増加を個別に評価

いずれの場合も、自己判断で中止・継続を決めるのではなく、皮膚科主治医と美容外科医の連携が重要です。

アトピーがあると脂肪吸引を諦めるべきなのか?

結論として、アトピー脂肪吸引は「絶対的な禁忌ではなく、準備次第で安全に施術可能」です。皮膚コンディションが安定した時期を選び、術前2〜4週間の肌づくりを行い、感染対策と傷跡ケアの設計を丁寧に行えば、健常肌の方と同等の仕上がりを目指せます。

ただし、湿疹が広範に活動している時期や、掻破痕が新鮮な時期は延期を推奨します。「今すぐ受けたい」よりも「最もきれいに仕上がる時期に受ける」ことを優先していただきたいと考えています。個人差が大きい領域ですので、まずはカウンセリングで肌の状態を診せていただければと思います。

美容外科の安全基準や術前評価については日本美容外科学会(JSAS)の情報も参考にしてください。当院の他の症例やリスク解説記事は脂肪吸引の関連コラム一覧からご覧いただけます。

よくある質問

Q. アトピーが顔だけにあるのですが、二の腕脂肪吸引は受けられますか?

吸引部位の皮膚が正常であれば、顔面のアトピーだけを理由に脂肪吸引を控える必要はありません。ただし全身の免疫傾向としてやや感染・炎症リスクが上がるため、術前の全身コンディション評価は丁寧に行います。

Q. ステロイド外用薬は手術の何日前から中止するべきですか?

手術部位以外への通常量の使用であれば中止不要です。手術部位そのものへの塗布は、症状再燃を避けつつ術直前48〜72時間程度で調整することが多いですが、症状の程度により個別判断となります。自己判断での中止は避けてください。

Q. アトピーだと傷跡が目立ちやすいと聞きましたが本当ですか?

肥厚性瘢痕になりやすい傾向はあります。ただし吸引孔は通常3〜5mmと小さく、位置デザインと術後の遮光・保湿・シリコンジェルシートによる管理を丁寧に行えば、多くのケースで6〜12ヶ月かけて目立たなくなります。

Q. 弾性着衣でかぶれた場合はどうすればよいですか?

まずは皮膚科主治医または当院にご相談ください。素材の変更、コットン下着との重ね着、装着時間の分割などで対応可能です。自己判断で圧迫を完全に外してしまうと仕上がりに影響しますので、ご相談を優先してください。

Q. デュピクセント使用中でも脂肪吸引は受けられますか?

デュピルマブは強い全身免疫抑制作用がある薬剤ではないため、原則継続したまま脂肪吸引を受けられるケースが多いです。ただし投与スケジュールと手術日の調整を主治医と行うことをおすすめします。

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【監修】森脇 進 / Shin Moriwaki(監修医師)

日本美容外科学会(JSAS)会員 / American Academy of Aesthetic Medicine 会員

米国医師免許資格(ECFMG certificate)

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