コラム

鎖骨の端がずきずき痛む変形性肩鎖関節症を五十肩と取り違えないために──ベンチプレスや荷物運びで悪化する肩上部の痛みと、幹細胞培養上清液の肩鎖関節注射という選択肢を森脇医師が整理する2026.07.21

肩の上、鎖骨の一番外側の端がずきずき痛む。重い荷物を持ち上げたときや、ベンチプレス・腕立て伏せで肩をぐっと押し込んだ瞬間に強くなる──こうした痛みは、五十肩や腱板の障害と間違えられやすいのですが、実際は肩鎖関節(けんさかんせつ、AC関節)そのものの炎症や変形が原因であることが少なくありません。この記事では、見落とされやすい変形性肩鎖関節症の特徴と、幹細胞培養上清液の肩鎖関節注射という保存的な選択肢について、AVAN TOKYO 銀座 再生医療の森脇医師が整理します。

この記事の要点

・変形性肩鎖関節症は、鎖骨の外側と肩甲骨の突起がなす小さな関節(AC関節)の炎症・変形による痛みで、五十肩や腱板障害と痛み方が似るが「痛みの一点」が異なる。

・重い荷物・腕を反対側の肩へ水平に持っていく動作・ベンチプレスなどで悪化するのが典型で、鎖骨の外側端を1本の指でピンポイントに指し示せることが多い。

・保存療法の柱は活動制限・肩甲帯の運動療法・NSAIDsで、局所ステロイド注射も選択肢だが繰り返しには限界がある。

・幹細胞培養上清液の関節注射は、抗炎症サイトカインと成長因子を含む生物学的アプローチで、ステロイドとは異なる作用軸をもつ選択肢として肩鎖関節にも応用が検討されている。

・脱臼後の高度な変形や不安定性・鎖骨遠位端の顕著な骨棘が主体の例では手術が優先されるべきで、上清液の関節注射は万能ではない。

肩鎖関節とはどこの関節か

肩の上部を触ると、鎖骨の一番外側にわずかに盛り上がった段差が触れます。その段差の直下にある小さな関節が肩鎖関節(AC関節)です。鎖骨と肩甲骨の肩峰を結ぶ、直径にして1〜2cmほどの平面関節で、内部には小さな関節円板(軟骨性のクッション)が存在します。可動域そのものは大きくありませんが、腕を挙げる・押す・引くといった動作のたびに肩甲骨が回旋する動きにあわせて微細にすべっているため、日常動作で常に負荷を受け続けている関節です。

若い頃のラグビー・柔道・自転車での転倒による肩鎖関節脱臼や、長年のベンチプレス・オーバーヘッド動作の繰り返しをきっかけに、この小さな関節に慢性的な負担が蓄積し、関節軟骨の摩耗と骨棘形成が進むと、変形性肩鎖関節症へと発展します。加齢そのものによる一次性の変形もあり、40代後半以降では無症状のうちにX線変化が現れることも珍しくありません。

acromioclavicular joint pain shoulder

変形性肩鎖関節症を五十肩・腱板障害と取り違えないために

肩の痛みで受診した患者さんの多くは、まず「五十肩でしょうか?」と口にされます。しかし、痛みの出所を丁寧に切り分けると、実は肩関節本体ではなく肩鎖関節が主犯だったというケースは決して少なくありません。

見分けるうえで重要なのは、痛みの「一点」を指で示せるかどうかです。変形性肩鎖関節症の患者さんは、鎖骨の外側端――ちょうど肩の上のわずかな段差――を1本の指でピンポイントに指し示せることが多いのが特徴です。これは五十肩(肩関節周囲炎)のようなびまん性の痛みや、腱板障害のように三角筋外側へ放散する痛み方とは対照的です。

もう一つの手がかりは、痛みを誘発する動作の質です。腕を反対側の肩へ水平に持っていく「クロスアーム動作」で症状が強くなる、あるいはベンチプレスの押し込み局面や、荷物を体幹の内側へ引き寄せた瞬間にずきっと来る、といったパターンはAC関節由来を強く示唆します。腕を挙げる際、真上(180度)に近づいたところで痛みが再燃する「ペインフルアーク(有痛弧)」もしばしば認められます。関節疾患の情報については日本整形外科学会のサイトも参照してください。

変形性肩鎖関節症に幹細胞培養上清液の肩鎖関節注射はどこまで期待できるか

診断がついたあと、保存療法の柱となるのは活動制限・NSAIDs(消炎鎮痛剤)・肩甲帯の運動療法です。強い痛みがある時期には局所ステロイド注射がしばしば選択されますが、ステロイドは炎症の火消しには有効な一方で、繰り返し打つと腱・靭帯・関節周囲組織への影響が懸念されるため、頻回使用は避けたい薬剤です。

こうした背景から、抗炎症性のサイトカインや成長因子を含む幹細胞培養上清液を関節局所に届けるアプローチが、ステロイドとは異なる作用軸をもつ選択肢として検討されるようになってきました。「炎症を強く抑え込む」ステロイドに対し、上清液は関節内の炎症サイクル自体を穏やかに調整し、組織の恒常性を整える方向のアプローチです。TGF-β・IGF-1・FGFといったサイトカインや成長因子が、滑膜・軟骨・関節包周囲の環境に働きかけると考えられていますが、この分野のエビデンスはまだ発展途上であり、単回で完結する治療でも、効果が保証される治療でもありません。

ただし、上清液の関節注射は魔法の一発ではありません。特に肩鎖関節脱臼後で肩鎖靭帯・烏口鎖骨靭帯の断裂による不安定性が残っている場合や、鎖骨遠位端の高度な変形・骨棘が明らかで機械的インピンジメントが主体になっている場合には、手術(鎖骨遠位端切除術:Mumford手術など)の相談が先立つべきです。上清液の適応は、あくまで「痛みと炎症が主体で、関節破壊が高度でない段階」に置かれます。効果は個人差があり、単回で完結するものでもない点は、初診時に患者さんと必ず共有するようにしています。

肩鎖関節への注射で気をつけたいこと

肩鎖関節は関節腔が小さく非常に浅い位置にあるため、盲目的な穿刺だと薬液が関節外の脂肪層や皮下組織に漏れてしまいます。エコーガイド下で関節腔を確認しながら少量を確実に届ける手技が望ましく、当院でもこの原則を守っています。注射直後に一過性の重だるさが出ることがあり、当日は重い荷物の持ち上げ・上半身のウェイトトレーニング・強い可動域運動を控えるよう指導します。数日以内に発赤・熱感・強い痛みが増強する場合は感染を疑って早期に受診してください。

なお、抗凝固薬や抗血小板薬を内服中の方は事前申告が必須です。血液をサラサラにする薬の休薬可否は原疾患ごとに判断が異なるため、自己判断で中止せず、処方医と連携したうえで施術日を調整する必要があります。幹細胞培養上清液の関節注射について詳しくはこちらもあわせて参照ください。

よくある質問

Q. 変形性肩鎖関節症は放っておくと悪くなりますか?

軽度の一次性変形では無症状で経過することもありますが、脱臼後や高負荷スポーツ歴のある方では、進行に伴って可動域制限・夜間痛・鎖骨遠位端の骨棘形成が徐々に強くなる傾向があります。日常動作に支障が出始めたら、画像評価を含めた診察を早めに受けることをおすすめします。

Q. 幹細胞培養上清液の肩鎖関節注射は何回くらい必要ですか?

病態と反応性によりますが、初回反応をみたうえで数週間ごとに追加投与を検討し、症状が落ち着いてきたら間隔をあける、という基本設計になります。全員が数回で完結するわけではなく、運動療法や活動調整と並行して評価していきます。効果には個人差があります。

Q. ステロイド注射から幹細胞培養上清液の注射に切り替えることはできますか?

可能です。ステロイドを繰り返し打つのを避けたいと考える方には、上清液は妥当な選択肢となりえます。ただし、ステロイド直後に上清液を重ねることは避け、一定の間隔をあけて反応を評価するのが安全です。

Q. 変形性肩鎖関節症でも運動やトレーニングは続けてよいですか?

基本方針は「痛みを強く誘発する動作を避ける」ことで、完全に休む必要はありません。ベンチプレスやプルオーバーのように肩上部を圧迫する種目は、当面フォームや重量を見直すことを推奨します。肩甲帯・体幹の安定化エクササイズは症状緩和に役立つことが多いです。

Q. 手術(鎖骨遠位端切除術)を勧められました。すぐに決めるべきですか?

高度変形や機械的インピンジメントが明らかで、保存療法を十分試しても症状が変わらない場合には手術が有力な選択肢です。一方で保存療法の余地がある段階では、幹細胞培養上清液の関節注射を含めた保存的アプローチを一定期間試すことも検討の余地があります。判断に迷う場合はセカンドオピニオンを取ることをためらう必要はありません。

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【監修】森脇 進 / Shin Moriwaki(監修医師)

日本美容外科学会(JSAS)会員 / American Academy of Aesthetic Medicine 会員

米国医師免許資格(ECFMG certificate)

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