再生医療のリスク分類(第一種・第二種・第三種)で幹細胞培養上清液の毛髪治療はどこに位置づくか2026.08.13
「幹細胞培養上清液を使う毛髪治療は第三種再生医療に該当します」と説明を受けたとき、多くの患者さんは『第一種より安全なのだろう』と直感的に解釈しがちです。しかしこのリスク分類は、治療で扱う細胞や上清液の医学的リスクの大きさを示すものであって、『その治療が必ず有効である』『すべてのクリニックが同じ品質を担保している』ことを意味するわけではありません。第三種再生医療という枠組みを正しく理解することは、幹細胞培養上清液の毛髪治療を選ぶ患者さん自身が安全と納得を守るための重要なリテラシーです。
この記事の要点
・第三種は、細胞そのものを移植する第一種・第二種より医学的リスクが相対的に低いカテゴリで、幹細胞培養上清液の毛髪治療の多くはここに含まれる。
・『第三種なら安全性が完全に担保されている』という誤解が広がっているが、届出施設・製造元のロット管理・治療計画書という3点は患者側で必ず確認する必要がある。
・『厚労省承認』『国が認めた治療』といった広告表現は、『届出(notification)』と『承認(approval)』の混同を招くため、意味の違いを整理して読む姿勢が欠かせない。
・このリスク分類は治療の安全性を患者さん自身で判断するための出発点であって、ゴールではない。
・幹細胞培養上清液を用いた毛髪治療でも、担当医との適応・限界・費用の説明を丁寧に受けることが最も重要である。
第三種再生医療のリスク分類とは何か
再生医療等安全性確保法では、実施する再生医療をリスクに応じて三段階に分けています。第一種はES細胞・iPS細胞や動物由来の細胞を扱う治療、第二種は自家・他家の体性幹細胞を体内に投与する治療、第三種はそれ以外に位置づけられる治療枠組みという整理です。幹細胞培養上清液(細胞そのものではなく、細胞が培養液中に分泌した液性成分)の投与治療は細胞移植ではないため、多くの場合、第三種として届出のもとで実施されます。
3つの分類はどう違うのか
第一種はES細胞・iPS細胞のように未分化度が高く、腫瘍化リスクや倫理的検討を要する治療枠組みです。第二種は自己の脂肪・骨髄などから取り出した体性幹細胞を膝関節や皮下に投与する治療で、細胞そのものを体内に留めるため、感染・拒絶・分化異常のリスクが第三種より高いと判断されています。第三種はそれらより医学的リスクが低いと判断された枠組みで、幹細胞培養上清液の毛髪治療の多くはここに該当します。
幹細胞培養上清液の毛髪治療はどこに位置づくのか
幹細胞培養上清液の毛髪治療は、上清液(=細胞の分泌物、無細胞のリキッド成分)を頭皮に注入・導入する治療設計です。細胞を体内に留める処置ではないため、第一種・第二種と比較すると医学的リスクは相対的に低いと位置づけられ、第三種として届出を出したうえで実施されます。ただし『第三種=リスクゼロ』ではないという点は誤解されがちで、投与手技・上清液の品質・患者側の体質という3つの要素は依然として臨床の変数として残ります。

患者側で『届出』と『承認』を混同しないための読み方
第三種の毛髪治療を選ぶとき、患者さんが最も混乱しやすいのは『届出』と『承認』の違いです。広告表現では両者が同じ響きで語られることがありますが、意味はまったく異なります。
『届出』は治療計画を提出する行政手続
再生医療等安全性確保法における『届出』は、実施する医療機関が治療計画書を認定再生医療等委員会に諮り、その意見を踏まえたうえで厚生労働省に提出する行政手続です。届出が受理されれば治療を実施できますが、届出はあくまで『その治療を実施する要件を満たした』ことを示すのみで、有効性を国が保証したわけではありません。届出後も、施術記録・有害事象報告・定期報告といった継続的な遵守が要求されます。
『承認』は薬機法の別プロセス
一方『承認』は、医薬品・医療機器・再生医療等製品として薬機法のもとで有効性と安全性の審査を経て、厚生労働大臣が認めた場合に得られるものです。『厚労省認可』『国が認めた治療』という広告表現は、しばしば届出済みであることを承認済みであるかのように誇張しますが、この2つはまったく別のプロセスです。第三種の毛髪治療の多くは『届出』であって『承認』ではない、という前提を患者側で正しく持つ必要があります。医薬品としてのエビデンスの読み方については日本皮膚科学会など専門学会の情報も参照しながら、広告の言葉を医学用語として読み解く姿勢が大切です。
『第三種再生医療=安全』ではない5つのチェックポイント
このリスク分類が『相対的に低リスク』を示していても、『安全性が完璧に担保されている』という意味ではありません。以下の5つは患者さんがクリニックに確認するべきポイントです。
第一に、届出施設として登録されているか──認定再生医療等委員会の名称と届出番号を提示できるクリニックを選ぶこと。第二に、上清液の製造元と『特定細胞加工物製造』の届出済み施設情報──無菌試験・マイコプラズマ・エンドトキシン等のロット検査体制は品質を左右します。第三に、治療計画書に沿った投与プロトコルであるか──回数・間隔・評価指標が事前に明示されているかを確認します。第四に、副作用と有害事象の説明があるか──内出血・腫脹・アレルギー反応など、頻度と対処方針の説明が誠実であることが重要です。第五に、費用と経過観察の全体像──この治療は保険適用外の自由診療で、1回の費用よりトータルの見積りが実態を示します。
よくある質問
Q. 第三種再生医療なら幹細胞培養上清液の毛髪治療は絶対に安全ですか?
『第三種』はリスクが相対的に低いことを示すカテゴリであって、安全性が完璧に担保されている意味ではありません。届出施設・製造元・ロット検査・治療計画書の各項目を確認し、担当医から適応と限界の説明を丁寧に受けることが不可欠です。
Q. 『厚労省認可』と広告に書かれていれば信頼できますか?
『厚労省認可』という表現は『届出済み』を誇張している場合があります。第三種は『届出』制度であって、医薬品・医療機器・再生医療等製品の『承認』とは異なる行政プロセスです。どちらの意味で使われているのか、確認する姿勢が大切です。
Q. 第二種・第一種の毛髪治療は存在しますか?
自家脂肪由来幹細胞などを頭皮に注入する治療は第二種に該当することがありますが、幹細胞培養上清液そのものを用いる毛髪治療は分泌物(無細胞)を扱うため第三種が中心です。iPS細胞由来の毛包再生などは第一種の枠組みで議論される段階ですが、まだ研究段階のものが多い状況です。
Q. 患者側で届出内容を確認する方法はありますか?
厚生労働省が公開している『再生医療等提供機関一覧』などから、届出済みの医療機関と治療計画名を閲覧できます。カウンセリング時に届出番号を確認し、公開情報と照らし合わせることで、患者さん自身でも一定の透明性を確かめられます。
Q. 『第三種だから何度でも受けて大丈夫』と言われましたが本当ですか?
リスク分類が低いことと『回数無制限で受けてよい』ことは別問題です。毛周期・炎症反応・費用対効果を踏まえた治療計画に沿った投与が原則で、必要以上の反復は組織への負担と経済的負担を増やすだけの可能性があります。
第三種再生医療のリスク分類は、患者さんが自分で幹細胞培養上清液の毛髪治療を選び取るための出発点にすぎません。分類の意味を正しく理解し、届出・製造元・治療計画書という3点を確認したうえで、担当医と適応・限界・費用を丁寧に相談することが、納得のいく毛髪治療への近道です。関連情報はAVAN TOKYO 銀座 毛髪再生医療のコラム一覧もあわせてご覧ください。
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【監修】森脇 進 / Shin Moriwaki(監修医師)
日本美容外科学会(JSAS)会員 / American Academy of Aesthetic Medicine 会員
ECFMG Certificate 取得
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