膝痛は強いのに軟骨はまだ残っている人へ──MRIで見える『膝骨髄浮腫』という変形性膝関節症の隠れた進行サインと、幹細胞培養上清液の膝関節注射で狙える関節内炎症環境を森脇医師が整理する2026.07.26
膝の痛みが強くて夜も眠れないほどなのに、レントゲン検査では「軟骨はまだそれほど減っていませんよ」と言われる患者さんは少なくありません。しかし膝の内側や大腿骨側にじんわりと広がる骨髄病変が、MRI画像で描き出されることがあります。この膝骨髄浮腫は、骨組織の内部に生じた水分貯留を意味する画像所見で、変形性膝関節症においては痛みの強さや進行速度と相関することが報告されている、見落とされやすい進行サインです。本記事では、膝骨髄浮腫がなぜ痛みを引き起こすのか、そして幹細胞培養上清液の膝関節注射という選択肢が関節内の炎症環境にどう関わりうるかを、AVAN TOKYO銀座の森脇医師の視点で誠実に整理します。
この記事の要点
・膝骨髄浮腫はMRIのT2脂肪抑制像やSTIR像で高信号域として描出される骨内部の水分貯留所見で、レントゲン検査では捉えられない
・X線で軟骨の摩耗があまり進んでいなくても、この病変の広がりが大きい場合は荷重時痛や夜間痛など強い症状を引き起こしうる
・骨髄病変の範囲は変形性膝関節症の進行スピードや人工膝関節置換術に至るまでの期間と相関することが縦断研究で示されている
・幹細胞培養上清液の膝関節注射は、関節内で優位となる炎症性サイトカインへの穏やかな是正を目指す選択肢である
・特発性膝骨壊死症や感染性関節炎、腫瘍が背景にある場合は保存的治療の適応から外れ、整形外科的な精査が最優先となる
膝骨髄浮腫とは何を意味する画像所見か
膝骨髄浮腫は、正確にはBone Marrow Lesion(骨髄病変)またはBone Marrow Edema-like Lesion(骨髄浮腫様病変)と呼ばれる概念で、大腿骨や脛骨の海綿骨内部に生じた水分貯留・微小骨折・線維化・血管増生などが混じり合った所見を指します。MRIのT2脂肪抑制像やSTIR像では白く高信号に描出され、通常のX線では骨の透過性がわずかに変化する程度で、はっきりとは映りません。だからこそ、X線だけで「大きな異常はない」と判断されると、この病変の存在が見落とされてしまうリスクがあります。
背景には、軟骨のクッション機能低下により大腿骨と脛骨の接触面で微細な繰り返し外力が加わり続けていること、そして関節内の炎症性サイトカインが軟骨下骨に及ぼす影響が想定されています。つまり膝骨髄浮腫は、「関節がまだ動いてはいるが、内部では負担が積み重なっている」ことを示す静かな警告灯のような所見なのです。

X線で軟骨が残っていても膝痛が強い理由
変形性膝関節症の重症度は伝統的にKL分類(Kellgren-Lawrence分類)で評価され、関節裂隙の狭小化と骨棘形成の程度でグレード分けされます。しかしこのX線分類は、患者さんが感じる痛みの強さと必ずしも一致しません。KLグレードI〜IIの比較的軽度な段階でも、MRIで骨髄病変が広範に確認される患者さんが強い痛みを訴えることがあります。
その理由は、痛みの発生源が軟骨そのものではなく、軟骨下骨・滑膜・関節包に分布する神経終末にあるからです。膝骨髄浮腫が生じている領域では、骨内圧の上昇や骨リモデリングの活発化に伴い、痛覚神経が刺激されやすくなります。特に体重をかけたときの荷重時痛や、じっと横になっているときの夜間痛が現れやすく、日常生活の質を大きく損ないます。関節疾患の情報については日本整形外科学会のガイドラインも参照してください。
変形性膝関節症の進行予測としての価値
複数の縦断研究では、骨髄病変の存在や範囲の拡大が、その後2〜3年での軟骨欠損の進行や人工膝関節置換術への到達リスクと相関することが報告されています。つまり膝骨髄浮腫は、単なる痛みの背景要因にとどまらず、変形性膝関節症の将来を占う一つの手がかりでもあるのです。
だからこそ、膝痛でMRIを撮って骨髄病変が確認された段階で、荷重管理・体重コントロール・大腿四頭筋の筋力維持・装具の活用といった保存療法を組み立て直すことに意義があります。手術に至る前の「まだ粘れる時間帯」にどのような介入を組み合わせるかが、その後の膝の運命を左右します。
幹細胞培養上清液の膝関節注射で狙える炎症環境
骨髄病変の背景にある関節内炎症サイクルには、IL-1β・TNF-α・MMP(マトリックスメタロプロテアーゼ)などの炎症性・破壊性メディエーターの過剰産生が関与しています。この炎症環境は、軟骨下骨のリモデリング異常を助長し、病変のさらなる拡大を招く悪循環につながることが基礎研究で示唆されています。
幹細胞培養上清液には、TGF-β・IGF-1・FGF・HGF・VEGFなど多様なサイトカインや成長因子、エクソソームが含まれており、これらが関節内の炎症性サイトカイン優位のバランスに対して抗炎症的に働きうると考えられています。膝関節注射という形で関節腔内に届けることで、滑膜や軟骨下骨の炎症微小環境に対して穏やかな是正を試みるのが、上清液注射の狙いです。
ただし、上清液注射で膝骨髄浮腫そのものを消退させると断定的に語れるだけのヒト臨床エビデンスは、まだ十分に蓄積されていません。あくまで「関節内の炎症サイクルを整えることで、痛みや機能に対して穏やかな変化を期待する」という立ち位置に留まります。幹細胞培養上清液の関節注射について詳しくはこちらもご参照ください。
注射を検討する際の適応と限界
骨髄病変が確認された膝に幹細胞培養上清液の膝関節注射を検討する際、まず前提として確認すべきは、その病変が「変形性膝関節症由来」なのか、それとも「特発性膝骨壊死症」「疲労骨折」「感染性関節炎」「腫瘍」など他の疾患由来なのかという鑑別です。特発性膝骨壊死症では骨梗塞が進行していることがあり、この場合は上清液注射の適応から外れ、整形外科的な精査と外科的介入の検討が優先されます。
また、KLグレードIVに相当する高度な関節破壊や、体重支持軸が大きく傾いた末期の変形性膝関節症では、上清液注射で得られる改善が限定的になり、人工膝関節置換術の適応を並行して検討する段階にあります。膝骨髄浮腫が保存的アプローチで粘れる範囲にあるのか、それとも外科的判断のタイミングなのかを見極めるためには、MRI画像・体重負荷アライメント・日常生活での疼痛程度を総合的に評価することが不可欠です。
よくある質問
Q. 膝骨髄浮腫はX線検査でも分かるのですか?
X線検査では骨髄内部の水分貯留を映し出すことができないため、この病変そのものは捉えられません。診断にはMRIが必要で、T2脂肪抑制像やSTIR像で白く高信号に描出される領域として確認されます。X線で軟骨がまだ残っていても、MRIで骨髄病変が確認されるケースは珍しくありません。
Q. 膝骨髄浮腫があると必ず膝痛が出るのですか?
病変の範囲と痛みの強さは完全には一致しませんが、変形性膝関節症の症例では病変が広いほど痛みが強い傾向が縦断研究で報告されています。特に荷重時痛や夜間痛がある場合は、骨髄病変の関与を念頭に置いた検査が望まれます。
Q. 幹細胞培養上清液の膝関節注射で骨髄病変は消えますか?
上清液の膝関節注射で病変そのものを確実に消退させることを断定的に約束できるヒト臨床エビデンスは、現時点では十分ではありません。関節内の炎症性サイトカインへの抗炎症的なアプローチを通じて痛みや機能に穏やかな変化が期待されますが、効果には個人差があり保証はできません。
Q. 骨髄病変があるときは運動を控えるべきですか?
ジャンプやランニングなど強い衝撃を伴う運動は病変を悪化させる懸念があるため、控えることが望ましいです。一方で、大腿四頭筋の筋力維持を目的とした低負荷の運動や水中歩行など、関節への衝撃が少ない運動は整形外科医と相談しながら継続することが推奨されます。
Q. 膝関節注射の後、MRIはいつ撮り直すべきですか?
骨髄病変の変化は数か月単位でゆっくり進むことが多いため、通常は3〜6か月おきに画像評価を行いながら経過を追います。ただし、痛みや機能変化が顕著に悪化した場合は、間隔を待たずに再評価を検討することが安全です。
──────────────
関連記事
- 膝が最後まで伸びない『膝屈曲拘縮』は変形性膝関節症の見落とされやすい進行サイン──幹細胞培養上清液の膝関節注射で狙える炎症・滑膜環境の是正を森脇医師が整理する
- 膝の夜間痛はなぜ起こるのか──寝ているだけで疼く膝が示す変形性膝関節症の進行サインと、幹細胞培養上清液の膝関節注射で狙える炎症コントロールを森脇医師が整理する
- 高齢者の膝が繰り返しずきずき痛む『偽痛風性関節炎』を痛風・変形性膝関節症と取り違えないために──ピロリン酸カルシウム結晶が招く関節内炎症と、幹細胞培養上清液の膝関節注射という選択肢を森脇医師が整理する
【監修】森脇 進 / Shin Moriwaki(監修医師)
日本美容外科学会(JSAS)会員 / American Academy of Aesthetic Medicine 会員
米国医師免許資格(ECFMG certificate)
──────────────
📍AVAN TOKYO 銀座 再生医療
AVAN TOKYO Ginza Regenerative Medicine
English / 中文 / Tiếng Việt 対応可能
ご相談は DM / LINE / Website / Phone より承っております。